カムカムエヴリバディで注目!! はじめて聴く ルイ・アームストロング – KKBOX

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昨年、生誕120周年・没後50年の節目を迎えた20世紀最大のジャズ・トラペット奏者にしてヴォーカリスト、ルイ・アームストロング。彼はトレードマークが大きな口(Such A Mouth)だったことから、“サッチモ”という愛称で世界中の人たちから親しまれています。特に「この素晴らしき世界(What A Wonderful World)」は数多くの映画やCMで使われていたこともあり、世代を問わず知らない人がいないほどの名曲です。


そのルイ・アームストロングが時を経て、いま再び脚光を浴びています。サウンドスキャンJAZZ週間TOP200 (2022/01/10-01/16)チャートでは1位から5位まで、彼のベストアルバムが独占するという現象が起きています。また各ストリーミングサイトでの再生回数も急伸しています。その理由は、現在放送中のNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。主人公となる安子(上白石萌音)~るい(深津絵里)~ひなた(川栄李奈) の3世代の家族の100年を綴る物語です。この3人を繋ぐ糸として重要な役割を果たすのが、ルイ・アームストロングの歌う「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」なのです。
今回はそんなルイ・アームストロングの魅力について、初心者でもわかりやすいようにユニバーサルミュージックのジャズ担当・斉藤嘉久さんにお話をお聞きしました。
それでは『カムカムエヴリバディ』で、ルイ・アームストロング(以下、ルイ)と「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート(以下、サニーサイド)」が、どのような役割になっているのかを簡単に紹介していきましょう。
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〈安子編〉では、和菓子屋の娘である安子と繊維会社の跡取り息子・稔との関係が描かれます。その二人の仲を急速に縮めたのは「サニーサイド」のレコードを一緒に聴いたことがきっかけでした。二人は結婚し赤ちゃんを授かりますが、やがて稔は出征し帰らぬ人となってしまいます。そして二人の間に生まれた娘は、ルイの名前からとった“るい”と名付けられます。

〈るい編〉では安子の娘のるいが主人公となり、高度成長期の大阪での生活が描かれます。そんな日々の中で、るいは、ジャズ喫茶「ナイト&デイ」で演奏するトランぺッターの大月錠一郎と知り合います。そんな錠一郎が演奏している曲が「サニーサイド」。錠一郎はるいの名前の由来がルイであることを見抜き、るいのことを親しみをもって「サッチモ」と呼んでいます。紆余曲折がありながらも二人は結婚し、るいは女の子を出産。“ひなた”と名付けます。
「ルイ・アームストロングって、こねん顔じゃったんか…」

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そして物語は第15週を終え、いよいよ現代へと繋がる〈ひなた編〉がスタートしました。今後、物語がどのような伏線回収されていくのか楽しみです。
ーここからは斉藤さんにお話をお聞きします。まず斉藤さんとルイとの出会いを教えてください。
私自身が学生時代からジャズをやっていて、大学時代はルイが音楽活動を始めた1920年代の頃のデキシーランド・ジャズをメインとしてやっていました。そういった意味でも、非常に親しみを持って尊敬している存在です。
ールイの魅力はなんでしょうか?
ルイの音楽スタイルは、昔ながらのデキシーランド・ジャズなんですけど、彼の歌声とトランペットは決して古臭くならない不思議な魅力を持っていると思います。

それは、これまでにもたくさんの映画やテレビCMで使われてきたことが物語っています。一番有名なのはベトナム戦争を描いた映画『グッドモーニングベトナム』で使われた「この素晴らしき世界」ですが、これがきっかけでリバイバルヒットしました。ロックで言うとクイーンは10年に1回ぐらいリバイバルが起こると言われていますが、ジャズにおいてはルイが同じような存在です。ドラマのおかげで、再びルイにも光が当たって嬉しいですよね。 しかも、彼の音楽性や「サニーサイド」が持つメッセージに寄り添う形でドラマが進行しているのにびっくりしています。

ー『カムカムエヴリバディ』で頻繁に取り上げられる「サニーサイド」が、すっかり耳馴染んできました。
ドラマの中で、ルイの音楽が大フィーチャーされるというのは聞いていましたが、あそこまでドラマの中において重要な役割を示して、なおかつ曲が「サニーサイド」というのが意外でした。
ーどういった点が意外だったんですか?
「サニーサイド」はジャズのスタンダードとしてたくさんのミュージシャンが演奏し、歌ってきた曲なんです。だから、ルイの超代表曲というわけではないんですね。「この素晴らしき世界」や「ハロ・ドーリー!」のような代表曲ではなく、「サニーサイド」が選ばれたのが印象的でした。
ーそうだったんですね。 この曲が生まれた1930年は、世界恐慌という暗く重い空気に包まれた時代でした。そんな中で人々の心に勇気と希望を与えてくれる歌詞と明るいメロディが「サニーサイド」の魅力です。

“心配事は家に置いといて
明るい表通りに飛び出そう
明るい表通りでは人生が楽しくなれる”
この歌詞は、時代は違えど『カムカムエヴリバディ』で描かれた太平洋戦争の時代にも、そしてコロナ禍の現代にも通じるメッセージとして胸に沁みてくるのだと思います。

「サニーサイド」は多くのアーティストがカバーしていますが、特にルイのバージョンは明るくて優しくて包容力がありながら、内に秘めた悲しみみたいなものも感じさせてくれます。ルイ自身、「サニーサイド」のレコーディングを4回もしていて、もっとリズム感あるバージョンや派手なバージョンもあるんです。その中でもルイが一番優しく歌ったバージョンがドラマで使われているのも、意図があるんだろうなと感じてます。聴く人に優しく寄り添う感じが素晴らしいですよね。
ー興味深い話ですね。そういった観点で聴き比べると「サニーサイド」をさらに深く楽しめそうです。


元々ジャズって素材がスタンダードなので、アーティストの解釈によって違うスタイルになり、様々なバージョンが生まれてくるのが面白いんです。ルイはまさにその開祖だと思います。自分が演奏すれば何でもジャズになるという自信とテクニックやセンスを持った人でした。だから同じ曲をレコーディングしても、それぞれまったく違うものになっているんでしょうね。そんなことを意識しながら聴き比べてみてください。

この曲の邦題は「明るい表通り」というタイトルなんですが、日本のレコード会社で脈々と受け継がれてきたタイトルなんです。それをドラマでは「日なたの道」というタイトルとして紹介しているのがいいなと思います。これまでとは違う解釈でつけられた「日なた」という表現は、『カムカムエヴリバディ』にぴったりな優しさを感じます。
ーこの曲は、もともとはシャンソンの名曲だったということを知って驚きました。
1946年に発表されたフランスのシャンソン歌手であるエディット・ピアフの代表曲です。フランスで人気の高かったこの曲を、ルイなりに解釈し、自分のものにしているのが聴きどころだと思います。〈音楽にジャンルや国境は関係ない〉ということを体現している曲ですよね。


ーシャンソンが、メロウなジャズナンバーになってますね。
ルイは音楽をジャンルとしてとらえることがなかったんでしょうね。例えば、神様に捧げる神聖な音楽であるゴスペルと世俗的なジャズを交えることはタブーとされていたのですが、この境界を破ったひとりがルイでした。1938年に録音したゴスペル・ソング「When the Saints Go Marching In(聖者の行進)」は、それ以降ジャズの定番として現在に至っています。

またルイは1930年代から海外ツアーをおこない、世界中の人たちから愛される存在でした。そんなこともあり、ある国では争っていた軍隊が停戦協定を定めて、ルイのコンサートを観に行ったという信じられないエピソードもあります。
“音楽にはジャンルも国境もない。
自分が演奏し歌うことで、世界中に平和をもたらす”
そんな想いと自覚を音楽活動を始めた頃から持っていたのでしょう。だからこそ、ルイとしての「バラ色の人生」が生まれたのだと思います。
ールイがディズニー音楽のアルバムをリリースしていたことにも驚きました。
私も詳しくはわからないのですが、ウォルト・ディズニー本人から企画を依頼されたのが『サッチモ・シングス・ディズニー』です。ディズニーランドに行くとデキシーランド・ジャズの音楽が流れていたり、バンド演奏されてますよね。これは、まさしくルイがやっていた音楽の原点だったということもあって、この素晴らしい企画が実現したのではないでしょうか。

ーデキシーランド・ジャズはどんな音楽スタイルなんでしょうか?
デキシーランド・ジャズは20世紀初頭にニューオリンズでジャズが生まれた当時のスタイルを踏襲しています。2拍子の跳ねるようなリズムとバンドが一丸となった力強いアンサンブルが魅力です。
出典元:YouTube(The Ed Sullivan Show)
ー「ハロー・ドーリー!」は、3ヶ月間ビルボードの1位を独占していたビートルズの「I Want To Hold Your Hand(邦題:抱きしめたい)」連続記録をストップさせ、全米1位となった曲です。
1964年にブロードウェイで初上演されたミュージカル『ハロー・ドーリー!」が大ヒットしていました。それをいち早くカバーしたのがルイで大ヒットに繋がっていきました。カバー曲がヒットすることは、当時としては珍しいことではなく、人気の曲が発表されるとジャズミュージシャンたちはすぐにカバーしてリリースしていたんです。ウェス・モンゴメリーも、ビートルズの「A Day In The Life」がリリースされた1ヵ月後にカバーレコーディングして、ジャズ・アルバム・チャート1位を獲得してます。

ージャズアーティストが、ビルボード1位になるなんてちょっと信じられないです。
この頃のルイはジャズのバックグラウンドを持ったエンターティナーという存在だったので、 もはや単なるジャズアーティストという見られ方はなかったと思います。それどころか、フランク・シナトラ、ナットキング・コールと並んで、アメリカン・ポピュラーミュージックを代表するアーティストになっていたんです。だからこそ、ビートルズと競い合えたんでしょうね。
ー長くいろんな映画やCMで使われ、世界中の人の耳に残るあまりにも有名な「この素晴らしき世界 」ですが、発表された時はイギリスでは1位を獲得してますが、アメリカでは中ヒットに終わっていたんですね。
当時ベトナム戦争の真っ只中で、アメリカ国内が非常に荒んでいた時代でした。特に若者たちは、明るい未来を全く考えられないような状況だったようです。そんな中でルイは「まだまだ世界は素晴らしいんだ」ということを伝えたくて、プロデューサーであったボブ・シールに「この素晴らしき世界」を書いてもらいました。決して声高に反戦を叫んでいる曲ではありませんが、「戦争反対」という意志がしっかりと込められた曲になっています。ただアメリカそのものは国策としてベトナム戦争を推進していたし、戦争肯定派の人たちもいたので、この曲を受け入れられない人もいたんだと思います。

ー斉藤さんが思う、「この素晴らしき世界」の素晴らしさを教えてください。
歌の素晴らしさに尽きます。この曲でルイはトランペットは全く吹いていなくて、ボーカリストに徹しています。それだけ、この曲に託したメッセージは大きかったんだなと思います。
ーここまで5曲はKKBOXが選んだ曲を解説してもらいましたが、斉藤さんとしてはどんな曲がオススメですか?
すべてがオススメなんですが(笑)。アルバムになりますがエラ・フィッツジェラルドと一緒に制作した『エラ・アンド・ルイ』はどうでしょうか。オスカーピーターソン・トリオとギタリストだけをバックにしたデュエットアルバムですが、二人の掛け合いが本当に素晴らしいし、本当にリラックスして聴けます。

これはモノラルでレコーディングされたアルバムです。ルイとエラはひとつのマイクを分け合って歌っているんです。ルイが歌う時はルイが前に来て、エラが歌う時はエラが前に来て歌っています。是非そんな光景を思い浮かべながら聴いてみてください。この「ムーンリバー」もそうですが、ルイの歌声は不思議ですよね。決して美しい声ではなく、どちらかと言えばダミ声に近いのに、なんでこんなに感動できるんだろうといつも思います。

ートランペット奏者としてのルイの凄さがわかる代表曲はなんでしょうか?
1928年にレコーディングした「ウエスト・エンド・ブルース」はトランペットの独奏から始まる曲です。このイントロは高音も出さなきゃいけないし、指使いも早くて非常に難しいんです。この曲はルイが20代の頃の演奏ですが、すでに半端のないテクニックだったことがわかります。

いまでもこの曲を吹けるようになるのが、トランペッターとしてのひとつのハードルと言われてさえいます。コロナ禍で現代のジャズトランペッターたちが「ウエスト・エンド・ブルース・チャレンジ」と称して、このイントロをカバーし合い、競い合うという動画が投稿されて話題になりました。この曲を作り、最初に演奏したのがルイだったんです。

この曲の後半で歌詞を歌っていたルイが、突然スキャットになるんです。まるでトランペットを吹いているかのように歌っているんでが、これがスキャットの原点になったと言われています。歌詞カードを落としてしまったというエピソードもありますが、僕は確信的にやっていたんだと思っています。他にも元を辿ればルイだったというくらい革新的なことをたくさんやってきています。だからジャズアーティストのみならず、いろんな人に影響を与え続けているんです。

いかがでしたか。ドラマ『カムカムエヴリバディ』で身近に感じるようになったルイ・アームストロング。「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」以外にも、様々な背景があったり、いろんなアーティストに影響を与えた曲がたくさんあります。この機会にルイ・アームストロングの音楽に触れてみてください。

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