strange world's end | Skream! インタビュー 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト – Skream!

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INTERVIEW
Japanese
2022年08月号掲載
メンバー:飯田 カヅキ(Gt/Vo) 平 マサト(Ba) フルカワ リュウイチ(Dr)
インタビュアー:石角 友香
人として耐えきれない不条理や不誠実に対して、断罪し続けてきたバンドがstrange world’s endだと思う。今、このバンド名が妙にリアリティを増す現実の中で、これまでストレートに表現していたことがもはや洒落にならないことを自覚した結果が、5年5ヶ月ぶりとなるニュー・アルバム『strange world’s end』には見て取れた。フルカワリュウイチが正式メンバーに固定してから初のアルバムでもあり、また、3リズム以外の上モノやパーカッションなどを効果的に配した意欲作でもある。自分自身も含め、欺瞞に耐えられないときにぜひ聴いてほしい、2022年だからこそ響く作品が完成した。
-バンドのフル・アルバムまでに飯田さんのソロや飯田カヅキ×判治宏隆のリリースがありましたが、いざstrange world’s endのアルバム制作となると、リリースする必然性みたいなものが必要だったりしましたか?
飯田:もうその間で制作には入ってたんです。実際次のアルバムのタイトルみたいなのは前作(2017年リリースの2ndアルバム『やっぱり、お前が死ねばいい。』)を作ってから出して、もうメンバーに伝えたので。前作の前に出たやつ(2014年リリースの1stアルバム『君が死んでも、世界は別に変わらない。』)と前作と今度出るやつで3部作的な感じにしようと思ったんです。でも、パターン化というか、このまんま作ってもたぶん自分の予想の範囲内かな? と思ってた部分があったんですよ。で、この制作の途中からいろいろ掴めるようになってきたんです。もうちょっと今までより踏み込んだものを作ろうと、自分たちで作ってた自分らしさみたいなものを壊す作業をしてたんで、それなりに時間がかかっちゃったのかなっていうのはありますね。でもおかげで新しい表現としての自由は掴めたなと思ってます。
-セルフ・タイトルには、みなさんの気持ちとしてはどういうものが入ってるんですか?
飯田:今年に入って完成が見えたぐらいで、このタイトルでいこうかなと思って。今、いろんな状況があるんで、作品が作れない状況がもしかしたら来るのかもしれない。そう考えて今の自分たちを全部突っ込む、という意味でこのタイトルにした感じですかね。ふたりはそういうイメージある?

平:俺はないかな。”タイトルこれだから”って言われて、”わかった”って。

フルカワ:この前は別のタイトルを聞いてて、前のタイトルも聞いたのも、前作を出したあとぐらいに”次これで行くよ~”って言われたのを覚えてるんですけど、そこを掘り下げているわけじゃないんで、どっかで気分が変わってタイトルも変わったんだろうなぐらいにしか思ってないです。
-現在のコロナ禍ではないんですけど、ちょっと予見するような、決していい方向にはいってないよねっていう感じはずっとあったと思うんです。strange world’s endってバンド名がどんどんリアリティを増していく一方というか。
飯田:そうですね、実際のところ。
-知らない人はバンド名なのかアルバム・タイトルなのかわからないかもしれない。
飯田:そのほうがいいですね、今回は。
-アルバムがまとまるきっかけになった曲などはあるんですか?
飯田:特にこの曲というより、今いる地点と、次にイメージしている地点を繋げられる楽曲を選んだんじゃないかなと思うんですけど。最後の曲の「シューゲイザー」はバンドの最初のライヴからやっている曲で、お客さんも思い入れのある曲だと思うんですけど、いい加減収録しないとたぶんもう正式音源に突っ込めないっていうのがあったよね?

平:引っ張ってもしょうがないかなみたいな。

飯田:セルフ・タイトルにしたのは仕切り直しで。またここから始まるっていうのもあるんですけど、本当はこの間にもう1枚あったようなイメージなんです。それを通過して、今回のが出るって感じなんですよね。だから不思議な感覚での3枚目で。気持ち的にはリフレッシュというか、新鮮ではあるかもしれないですね。リュウイチ君はこの中でこれだっていう曲はある?

フルカワ:僕、今作が正式にメンバーになってから出る初めての音源ってことになるんですけど、その前の2作でやってないようなドラムの感じとか、曲の作りとかを持ち込めたかなと思ってるのが、2曲目の「暴発」っていう曲と3曲目の「雨の迷宮」っていう曲なんです。変な言い方をすると、前のドラマーだったらこの曲はたぶんできてないだろうなっていう2曲なので、新しくここから仕切り直しで始める意味でも、僕としては結構大きい2曲かなと思うんですよね。
-「雨の迷宮」は他のバンドがやる16ビートの曲とは違う感じがあります。
飯田:ありがとうございます。
-こういうグルーヴでこの歌が乗ると、より狂気が増すというか。今回、他の楽曲もそうですけど、アレンジが変わりましたね。
飯田:アレンジはたしかに。もともとstrange(strange world’s end)のコンセプトとして、できるかぎりシンプルにするといいというのがあって、それに多少ギターのリードとかノイズとかを重ねるような形で作ってきたんですけど、それがやっぱり自分のやりたいことだと。以前は再現性を重要視してた部分があって、”ライヴだとその音鳴ってないじゃん”みたいなのがあったんですけど。前作とまた同じような感じで作るのかって考えたときに、今回はCDはCDで、ライヴに関しては演奏力とか表現力でカバーすればいいかなと思って。シンセを使ったり、リュウイチ君で言えばパーカッションを使ったりして、音作りも変わりましたね。
-パーカッションを入れたイメージって?
フルカワ:ここにこの音が鳴ってたら面白いんだろうなっていうのがずっと前からあって。でも入れて邪魔になるかなとか、いろいろ考えたんですよ。パーカッションって、足したら足しただけどんどん足したくなってしまうので。で、その話をふたりに聞いたら、”もう入れられるもの、まず全部入れていいよ”ってお許しが出たので、今回全部やってみてそこから削った感じですかね。
-パーカッションにもいろんなニュアンスがありますからね。
フルカワ:比較的オルタナティヴというよりも民族音楽的な、どんちゃかどんちゃかみたいな感じのパーカッションを出せたらいいなぁっていうのはずっと思ってて。ギターやベースのフレーズとか、ドラムのリズムが全部シンプルだったとしても、後ろでそういうのが鳴ってると、それだけできっと、ちょっと泥くさくなるかなってイメージはありました。
-「暴発」はシンセ・ストリングスが入ってますか?
飯田:入ってますね。
-効果的ですね。この曲に関しては”メーデー”という歌詞が一番多く出てきます。楽曲全体のイメージからアレンジもついたって感じですか?
飯田:原曲は平君だよね? スタジオでジャムってる音源を各自持ち帰るんですけど、このアレンジのベースはほとんど平君の原曲の流れでいったもんね。だから平君が大枠のアレンジをしたのに俺たちが色をつけた感じです。それを拡張する感じで、パーカッションとかシンセとかが入ってるんですよ。歌詞はわりと後半ですね。で、この”メーデー”の部分は、たぶんもともとはなかったんじゃないかな。

平:イメージとしては、映画の”ブラックホーク・ダウン”とか、たしかそんな感じのことを言ってた気がする。最初に救急車の音みたいなのを入れたのも、緊急事態じゃないけど、そういう音を入れたくて。

飯田:最初のAメロのギターの音は、サイレンみたいな音にするためにフェイザーがちょっと入ってるんです。SEじゃなくてどうやってギターで作ろうかといろいろ試してあの音になってるんですけど。
-”ブラックホーク・ダウン”のどんなところがリファレンスに?
平:戦争映画で、ヘリコプターが落とされたときに言うんですよ。”Black Hawk down.”みたいな。そう言いながらヘリコプターが墜落してくっていう、そこだけのイメージ。
飯田:そのへんやっぱりリンクしたんだね。”メーデー、メーデー”っていう”助けて!”みたいなところと。
-リファレンスとしては映画とかが多いですか?
平:わかりやすいかなと思ってそうやって言うときはあるけど、あまりに核心を突きすぎてもうそれしか思わなくなっちゃうんで、ほとんど言わないです。
-今回、音の抜き差しみたいな意味で言うと、飯田さんのヴォーカルがよりストレートに届く曲があって。
飯田:ありがとうございます。
-内容的にもストレートですね。そこはもう聞いたままじゃないか? ぐらいの。
飯田:どうなんですかね。自分ではもはや芸風でやってるようなものでもあるので、特に意識はないんですけど。
-ソロともインストとももちろん違う、言葉があるぶんだけ何か入ってくる情報っていうのもあるわけで。てらいがないし、ぼやかして言ってる場合でもないだろうっていう印象が強い気がしたんですけど。そういう心境でした?
飯田:この状況下を、わかりやすい言葉でありつつも、どれだけブラック・ジョークっていうか、皮肉れるか考えましたね。一応前作と比べると、前作ほどストレートな歌詞ではなくて、変えていると思ってて。ストレートな言葉を使ってはいるんですけど、もう少し表現をより皮肉な感じにしたのかなって気がしますね。言葉としてはシンプルではあるんですけど、よりそういうのを考えて作ったような。
-ズバリな感じは「逆エヴォリューション」で、飯田さんはある人たちに”辞めてくれないか/人間”と歌うんだなと思って。
飯田:そうですね。前で言えばこれが”死んでくれないか”だったんですよ。最初の仮歌はたぶんそうだったと思うんですけど、相手に対してもっと広く茶化せる言葉として、”辞めてくれないか/人間”に変えたのかなというのは、今思えばありますね。「逆エヴォリューション」とかは、普段の生活で結構思うことを入れているのかなって気がします。
-知らない人に対しての誹謗中傷が目につくようになって久しいし。
飯田:それに対する部分が、このかぎかっこの歌詞なんです。”「そりゃぁ無ぇよ」”、”「それも無ぇよ」”っていう自分からのひと言ですね。ここ数年の誹謗中傷に対する曲なんですけど、自分と変わりない人を遠くの安全地帯から攻めて、そのことによって人間が時として自分の命を絶ったり、政治家が裏ではよろしくないことをしたり。そういう人たちに対しての最後の言葉ですかね。
-今現実が 映画とか小説よりも恐ろしいことになってるんで、洒落にならんなっていう感じはありますよね。そういうテーマはstrangeにはずっとあるテーマなのかもしれないですけど、「シューゲイザー」で歌われていることは時代に関係なく根本なのかなって。
飯田:嬉しいですね。「シューゲイザー」の歌詞で言えば、”永遠的なもの”にやっぱ憧れが昔からあって。しかし”永遠”というものは結局人間だけの尺の考え方であって、実際のところは、何兆年だか何光年後だかわかんないですけど、いずれ宇宙も縮んで消え去ることになってるんです。まぁそれは人間の認知できることの中のことなんで、もしかしたらもっと別の話があるのかもしれないんですけど、その中で言えば、”永遠”はこの一瞬の中に入ってるんだよなぁっていうのはよく思うことで。ライヴもそうではあるんですが、自分の記憶のいつぞやのことを思い出すことがあって、それがいわゆる”永遠”なのかなと思うんですね。あのときああだったなとか、あのときこんな言葉、こんな天気でこんな表情でとかいうことを思い出すことが、ひとつの”永遠”であって。その人それぞれの”永遠”っていうのがありつつも、結局それを持ってる人間もいずれ死んでしまえばその永遠と一緒に消えていくわけです。でも、消えてしまうっていうことは逆に救いなのかなと思いますね。
-人間だから儚く感じるし、あるいは人間の業なんでしょうね。だからすごくスタンダードな曲だなと思います。
飯田:ありがとうございます。たぶんそうだと思いますね。
-音楽的な面で今回のチャレンジをもうちょっと聞かせてもらっていいですか?
平:面白いことというより、ドラムがちゃんとしてるからちゃんとしたことができてるんです。自分もそうなんですが、今までドラムじゃない人たちがドラムをやってたから。「暴発」とかもそうなんですけど、言ったらやってくれるってすげえ楽だなみたいな(笑)。
-ドラマーの引き出しがあるっていうのはもちろん楽ですよね。
平:当たり前なんでしょうけど、うちらにとってはそれがすごい。
対世間だけなら、怒りのベクトルも外を向くだろうが、人間の矛盾や虚しさに誠実に対峙した音楽を聴くと、ジャンルを越えてあらゆる人に刺さる表現が立ち上がる。活動約16年にしてついにセルフ・タイトルの3rdアルバムとなった本作。ドラムのフルカワリュウイチが正式メンバーとしてレコーディングに参加したことで、3ピースの骨格は安定し、且つ3リズム以外にパーカッションやシンセ、シンセ・ストリングスなどを導入しても揺らがないトライアングルが組み上がった印象だ。「暴発」でサイレンのように聴こえるギターや、助けを求める”メーデー”のリフレインは苦しくもリアルだし、いわゆる誹謗中傷や冷笑系に対する徹底した断罪を歌う「逆エヴォリューション」の、震えるような怒りなど、目を背けられない全10曲。(石角 友香)
1stアルバム以来3年ぶり、ドラマーの脱退を経て完成した2ndアルバムは、前作のアンサーともいえる強烈なタイトルがつけられている。内省的な人間が外向きの言葉を発しているというポジティヴな意味合いをタイトルに持たせているという今作は、”叫んでいた胸の奥では 助けてくれ愛してくれと”(「敗北」)、”本当はずっと愛されたくて存在理由が欲しかっただけ”(「接触」)など、たしかに何かを求めて外に手を伸ばしもがいている印象を受ける。それゆえに、もがき苦しんだ末に光明に行き着いたかのようなラスト「フロンティア」(名曲!)は感動的で、アルバムを聴き終わったあとの余韻は意外なほどに清々しい。(岡本 貴之)
自分のくだらなさを知ることは大事なことだ。俺は自分を特別だなんて思わない。ただ、自分の人生をかけがえのないものだとは思っている。でも、それは君には関係のないことだ。だから”生きろ”なんて言うな。”頑張れ”なんて言うな。勝手にやるから。君も勝手にしろよ。I need to be myself. 俺は俺でしかあれないし、君は君でしかあれないのだから。――strange world’s endの音楽には、そんな他者への期待を捨て、等身大の自分を見つめ続けた果てにある”個”の強さがある。グランジ直系のギター・サウンドは感情を抉り出すような生々しさに満ち、言葉はどこまでも辛らつ。憎しみと哀しみと自己嫌悪が渦巻いている。だが、この1stアルバムは最後、どこまでもピュアな祈りに行き着く。汚れた瞳にしか見れない景色もあるのだ。(天野 史彬)
作品が作れない状況がもしかしたら来るのかもしれない。そう考えて、今の自分たちをすべて突っ込む、という意味でセルフ・タイトルにした
パッと見かなりヘヴィですけど、ある方向から見るととてもポジティヴな言葉に変わるんです
俺たちは崖にいる人間を”そっち行っちゃダメだよ”で連れ戻すんじゃなくて そのまま突き落としちゃうタイプなんです
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