『プロセカ』ユーザー数がこの半年で1.5~2倍に ― TikTokでバズるなどして高校生がこぞってプレイし、彼らがボカロやネット音楽に興味を持つようになる【インタビュー】(電ファミニコゲーマー) – Yahoo!ニュース – Yahoo!ニュース

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『プロセカ』ユーザー数がこの半年で1.5~2倍に ― TikTokでバズるなどして高校生がこぞってプレイし、彼らがボカロやネット音楽に興味を持つようになる【インタビュー】
 『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下『プロセカ』)は、2022年3月末で、サービス開始から1.5周年を迎えた。 『プロジェクトセカイ』画像・動画ギャラリー  2020年9月30日のサービス開始以来、『プロセカ』のユーザー数は500万人(2021年7月時点)を突破しており、月間アクティブユーザー数は300万人を超えるなど、非常に高い人気を誇っている。なかでも10代から20代の若いファンが特に多くなっている点が、大きな特徴となっている。  LINEリサーチによる「高校生がハマっているスマホゲーム」の調査では、男子・女子の1位がそれぞれ異なるなかで、2位は男女ともに『プロセカ』が占めており、性別を超えた人気の高さが確認できる。  電ファミニコゲーマーでは、『プロセカ』のサービス開始前からその動向を追っているが、このように、10代から圧倒的な支持を受けている『プロセカ』が、これから2周年に向けてどのような方向に進んでいくのか、プロデューサー陣にお話を伺った。  ゲームの開発・運営を担当しているColorful Palette代表取締役社長であり、本作のプロデューサーである近藤裕一郎氏と、セガのプロデューサーである小菅慎吾氏に加えて、今回はクリプトン・フューチャー・メディアのプロデューサーであり「初音ミク」の責任者として知られる佐々木渉氏にも参加していただいた。  『プロセカ』では1周年を機に、ファンからも待望されていた有観客のリアルライブが開催されたほか、各種企業とのコラボ企画が実現するなど、ゲームの外側での話題も非常に活発なものとなっている。今回の取材では、そうした面も含めて詳しくお話を聞いている。  その一方でこれから2周年に向けては、ゲームやその展開にまつわる新たな課題も少しずつ出てきているようだ。ボカロカルチャーが日本の音楽シーンに大きな影響を与えている現在、その一翼を担う存在となった『プロセカ』の現在とこれからが、このインタビューから見えてくるはずだ。 取材/伊藤誠之介、ジスマロック 文/伊藤誠之介 編集/クリモトコウダイ 撮影/増田雄介 ■高校生が今、遊んでいるゲームとしての「責任」みたいなものを感じる ──まずは1.5周年おめでとうございます。1周年からここまでの半年間を振り返ってみて、いかがですか? 近藤氏:  1周年をきっかけにして、ユーザーさんがかなり増えたんです。ホントに1.5~2倍ぐらいになっていて。しかもそれが元に戻るのではなく、ずっとそのまま続いてきている。今まで遊んでくれていたお客様はそのまま遊び続けてくれている上に、1周年というタイミングで『プロセカ』を知ってくれた新しいお客様が多かったのかな、という印象ですね。 小菅氏:  お客様が増えたのもあるんですけど、1周年までずっとダッシュでやってきて、僕らの中でもがんばってやってきたぶん、これから2年、3年とさらに成長し続けていくにはどうするか、もう一回ちゃんと話し始めた時期でもありますね、この半年間は。 佐々木氏:  1周年の時に近藤さん、小菅さんと話していたのは、「ようやくここまで来て、わりと安定していきそうだね」っていうことで。そのタイミングでは「やれやれ」という感じが強かったんですよね。最初の立ちあげの時はボカロ好きの人であったり、ネットの音楽が好きな人たちに受け入れられて、喜んでもらえて、それで広げていければいいなと思っていたんです。  でも1周年から先になると、わりと若い方々が『プロセカ』きっかけで、ボカロとかネットの音楽とかに興味を持ってくださって。それで「やってみて、面白い!」というふうに実感していただけて、すごく広がったんだと思うんです。  そのぶん、自分たちが対象とするお客さんが、すごく幅が出てしまって。今までボカロをすごく楽しんできて大事にしてくれた人たちと、新しく「これはいい!」って入って来てくれた人たちの両方を見て、満足度を上げていかなきゃ、技術を上げていかなきゃっていう意味で、難易度は上がったなぁと思っていて。それで近藤さんと会うたびに「いやぁ、大変ですよね」って言ってるんです(笑)。 近藤氏:  そうですね。大変度は増しましたね。 佐々木氏:  10年前の「カゲロウプロジェクト」の時もそうでしたし、さらに遡って「悪ノ娘」の時なども、若い子たちがガーッと入ってきて。それで、今までいた人たちが「ちょっとついていけないな」とか「なんだろう、これは」って感じになったタイミングって、ボカロには何回かあったと思うんですけど。ただ今回は、なんというんですかね、規模がちょっと違うというか。  今、高校生の男女がいちばんハマっているゲームのひとつが、どうやら『プロセカ』らしくて……。僅差で、『LINE:ディズニー ツムツム』が上のようですが、競り合ってるらしいです。 近藤氏:  恐れ多いです。 佐々木氏:  だから今、日本の高校生にいちばんエモいものを刺しているのが、近藤さんなんですよ(笑)。 近藤氏:  いやいやいや(笑)。 ──じつは、今回の取材にあたってセガの広報さんに教えていただいたんですが、今、TikTokの「踊ってみた」で、『プロセカ』のオリジナル曲がバズったりもしているそうですね。 近藤氏:  「トンデモワンダーズ」ですね。たしかに、TikTokであの曲を聴いて『プロセカ』に来る人も、今は珍しくないと思います。 小菅氏:  最近は「にっこり^^調査隊のテーマ」も多く使っていただいているようですね。 ──それはつまり、『プロセカ』の曲が本当に、ティーンカルチャーの真ん中に来ちゃってるということですよね。 近藤氏:  そういうことになっているという実感は、僕らにはあまりないですけど……。 佐々木氏:  今の中高校生にとって、音楽もイラストもとてもキャッチーなんでしょうね。歌詞だとか音楽の感じだとかキャラクターとかに触れて「なんかしっくりくる」みたいな共感が広がったところで、大きくなっているがゆえの悩みとか苦しみとかがあるよなぁ、と思うんです。 近藤氏:  もともと『プロセカ』を立ち上げた時の目的としては、若い方にまたボカロ曲とかを楽しんでもらいたい、というのがあって。それがこの1、2年で、実際に盛り上がりが見られるようになってきたじゃないですか。それは『プロセカ』がというよりは、本当にいろいろなことが重なったと思うんですけれど。  ともあれ結果として、若い人たちにまたボカロ曲を聴いてもらいたい、みたいなところは正直もう、達成されたと思ってはいるんですが。でも一方で、それだけではなくなってしまった責任みたいなところも、正直あるなと思っていて。 ──責任というと? 近藤氏:  聴いてもらえるようになったね、で終わりではなくて、いかにここから先へとつなげていくか。聴く人だけじゃなくて何かを作ってくれる人も増えないと、結局持たないよね、とも思うので。  そこで次の一手をどう打っていったらいいんだろうと。今、新しいクリエイターの方が曲を作るっていうのは、楽曲コンテストの「プロセカNEXT」くらいしかやれていないので。ここで終わっちゃいけないな、ということをなんとなく考えています。  もっとやれることはたくさんあるなと思ってはいるんですけど、その前にゲームとして、サービスとしての下準備みたいなところで、まだやらなきゃいけないことがある感じですね。  ゲームとしてもアップデートしていかなきゃいけないですし、ゲームを支える土台みたいなものも、もっと強固にしなきゃいけないですし。それから、広がっていったユーザーさんたちに対するガイドラインといいますか、同じ作品を好きなユーザーとしてこういうことは守っていこうね、みたいな啓蒙もしなきゃいけないと思っています。とにかく、まず土台を固めなきゃというのが、最近考えていることですね。 ■リアルライブ「セカライ」で披露したダンスのモーションは、すべて新規のものです ──1周年からの半年間で、みなさんの中でいちばん大きな出来事だと感じたのは、どれでしょうか? 近藤氏:  僕はあんまりないですね。「これがあったから」というよりは、本当にいろんな幸運だったり、『プロセカ』を好きでいてくれる方たちが周りの人にお薦めしてくれたり、そういうことがあって今に至っていると思うんです。この間、CMをすごく大々的に打ったりしたわけでもないですから。 小菅氏:  僕はやっぱり、2022年1月にリアルライブ「プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE 1st – Link -」(「セカライ」)を開催できたことですね。本当に良かったです。 ──たしかに僕ら受け手の側としても、リアルライブはひとつの節目になった気がします。 小菅氏:  まだ『プロセカ』のゲームができていない頃から、近藤さんと「ライブはやりたいよね」と言って、いろいろ準備してきたので。ここまで来るには社会情勢など、本当にいろんなことがありましたけど。  でも、いざ開催できたらやっぱり良いものになったし。なによりお客さんの喜んでいる顔が見られたのが良かったです。アプリだと直接お客さんの顔を見られないので。けっこう感動しましたね。 近藤氏:  今の世の中ってそういった周辺のものも含めて、事業として成立していないとなかなか実行できないことも多いと思うんです。でも『プロセカ』は「全体のどこかで大きくプラスが出ていれば、どこかでチャレンジしてマイナスが出ても、結果的にプラスの収支だったらそれでいいよね」という話をしているので。ユーザーさんが本当に喜んでくれるものは、積極的にやっていこうと。  なので、リアルライブもクオリティ重視でやれたと思うんです。 ──それは心強いですね。当日のユーザーさんの反応は、いかがでしたか? 近藤氏:  思っていた以上に良かったですね。僕らとしてできるクオリティの最大限を出したつもりではいたんですけど、それでも初めてでしたし、情勢も情勢でしたし、どうなるのかは本当にわからなかったので。「本当に良かった」という反応だったので、やって良かったですね。 小菅氏:  お客さんの層が全体的に若いので、3Dキャラクターが目の前に登場するライブというのを、もしかしたら初めて見るお客さんもいたと思うんですよ。クリプトンさんはずっと前からやっていたと思うんですけど。 近藤氏:  マジカルミライとかはかなり以前からやっていますし。他にも『あんさんぶるスターズ!』とかでもやっていますし、最近でいうとVTuberとかもあるので。この形式ってわりともう一般的なものかなと思っていたんですけど。 小菅氏:  でも後ろで見ていたら、若い人で「本当に司が動いてる!」って喜んでいたり、「エモい……」って言いながら崩れ落ちる子とかがいましたから。  そういう様子を見ていると、これまで磨いてこられた技術がまずあって、それが『プロセカ』になってっていう、この座組じゃないと実現できなかったと思うんです。この3社でできて良かったなと思いますね。 近藤氏:  クリプトンさんがいないと絶対にできないクオリティでしたから。 佐々木氏:   でもこの技術のキッカケは、元を正せばセガさんですから(笑)。 近藤氏:  そうですね、元の元を辿っていくと。 佐々木氏:  それこそ10年以上前に、セガさんと一緒にミクのライブを始めた時には、IT方面のメディアの記者の方がいちばん喜んでいるというか(笑)。SF的だったり、いわゆるおじさんの夢、みたいなところの切り口で語られたりすることが多かったんですけど。  でも今回は『プロセカ』ということで、技術的な話というよりは、キャラクター同士がちょっとこう仲の良い雰囲気を醸し出したりするところが、お客さんとしてはいちばん感じ取りたいところだったと思うんです。若い子がCGにそういうものを求めてくれる時代になったのかなあって、ちょっと感慨深かったですね。  小菅氏:  ライブの振り付けは、MVとちょっと変えたりもしていて。こはねちゃんとか寧々ちゃんとかは、MVではそんなにうまく踊れない感じで撮っているんですけど、今回のライブではわりと振り切って、成長も少し感じ取れるような感じで踊っているんです。 ──ということは、リアルライブのモーションは、ゲームの流用ではなく新規のものだったのですか? 小菅氏:  そうですね。振り付けチームががんばってくれて、全部ライブ用に収録しました。 ──ゲーム内に3DMVが実装されていない「テレキャスタービーボーイ」や「ベノム」をキャラクターが踊っていたのは、そういうことだったんですね。  では、リアルライブのダンスがゲーム内の3DMVに反映される可能性はあるんですか? 近藤氏:  そうできればよいのですが、3DMVで作るにはダンスだけではなく、ステージを作って、カメラを作って……というふうに、ダンス以外のものもいろいろ作らなくてはいけないため、現時点では難しいというのが正直なところになります。 小菅氏:  そもそも、ステージの幅とかもぜんぜん違うので。なのでもし3DMVをやるとなったら、改めてそれ用にまた収録する形です。 近藤氏:  コネクトライブだと事前にモーションを撮るんじゃなくて、本当に当日そのままやっているので、3DMVのない曲が披露されたりもすると思うんですけど、それもやっぱり同じ話で。コネクトライブで披露した楽曲についても同様に、そのまま3DMVに用いることは難しいため、仮に3DMVを制作することになるならば新たに制作を行うことになります。申し訳ないですが正直厳しいですね。 ──3DMVの話題をもう少し聞かせてください。ここ最近の3DMVは、たとえば「少女レイ」での最後の踏切のシーンだったり、「にっこり^^調査隊のテーマ」の途中でセリフを書いたプラカードみたいなものが出てきたりっていう、いわゆるダンスのMVとはまた違った形の演出が、随所に見られるようになってきていると思うのですが? 小菅氏:  技術的にはじつは、もともとそういうこともできたんです。ただ、最初はスタンダードかつ王道なダンス系MVでキャラの魅力を最大限引き出すことを意識して制作してきました。1周年を越えて、制作サイドとしてもユーザーの皆さんにキャラの魅力が十分に伝わってきていることを感じたため、これまでの手法に加えて「楽曲の世界観」をより表現するための演出を意識できるようになってきました。  監督とかMVのチームが「ひとつのMVには必ずひとつ以上のチャレンジをしよう」と大胆にやった結果、最近はいろんな構図や展開が増えてきました。それに今、他のタイトルでもスゴイものがたくさんあるじゃないですか。そこは負けてらんないという気持ちもありますね。 ■カップヌードルコラボでは「後から“徳川”が来るので」と説明して、納得してもらった ──佐々木さんがこの半年間で特に印象的だった出来事は? 佐々木氏:  僕は2021年10月に開催した「セカイシンフォニー 2021」っていうオーケストラコンサートですね。『プロセカ』の楽曲をオーケストラやバンドが演奏するという、リアルライブの「セカライ」とはまた違った形のライブで。  これは、少し尖っているので『プロセカ』のユーザー全員が喜ぶようなものではないと思うんです。でもすごく音楽に親しまれているファンの人たち、たとえば楽器を演奏したことがある子たちにしてみたら、オーケストラと『プロセカ』が一緒になるというのは、生音のすごくゴージャスな体験だったと思うんです。  あとは、ゲームのローンチ前から進めさせてもらっていた、ポカリスエットとのコラボ企画ですね。『プロセカ』ならではの高校生の青春のエモさだとか、ある種キラキラした綺麗な感じが、ポカリスエットさんというブランドとご一緒させていただいたことで、表現できたと思います。 ──ちょうどコラボの話題が出てきたのでお聞きしますが、2022年に入ってからの話題と言えば、カップヌードルとのコラボが、非常にインパクトがありましたね。まずなにより、カップヌードルの「味」という切り口で、オリジナル曲が5曲も作られるということにビックリしました(笑)。 佐々木氏:  そうですね。そもそも最初はカップヌードルの「味」が9種類あったので、「9曲にすんの? どうすんの!?」みたいな感じで、2ヵ月ぐらいバタバタしましたから(笑)。 一同:  (笑)。 佐々木氏:  いろいろな意見交換があった上で、結果的には親和性のある「味」をふたつずつまとめて、「このふたつの味をまとめたんですけど」っていう話をクリエイターさんにしていったんですけど(笑)。  そうするとクリエイターさんとしては、最初はやっぱりキョトンとされるんですよ。「無茶ぶり?」みたいになっちゃう。そこから、詳しく話し合っていって、例えばボカロPさんたちのファンが興ざめしないように、あまり宣伝っぽくなりすぎないように引き算するのが一番重要で、各方面の意識合わせと温度感を調整するのがキモでした。クリエイターさん側の自由度を確保できるように、クライアントさんとも意見交換を繰り返すことが多かったです。反面、ちょっと悪ノリも含めて、楽しみながらやっているような感じで作っていかないと、お客さんにも喜んでもらえないのかなと考えながら。  でも曲数も含めて、ここまで一気に曲を作る取り組みは今までなかったものなので、大変でしたね。 近藤氏:  もう本当に大変でした。でも僕よりも、佐々木さんとか現場の人たちがめちゃめちゃ大変だったと思います。 ──カップヌードルコラボでは、『プロセカ』の既存のユニットではなくて、ちょっと変わったメンバー構成になっていますよね。東雲姉弟に天馬兄妹、日野森姉妹というきょうだい、姉妹コンビだったり、奏と寧々だったり。 近藤氏:  コラボのキーワードとして、「家族で食べる」とか「家の中で食べる」というのがまず最初にあったんです。そこでプロセカ内の家族関係があるふたりをピックアップしたり、奏と寧々はインドアというところですね。 ──「カップヌードルと言えば、やっぱり奏だ!」というのもあったのですか? 近藤氏:  それはそうですよね。『プロセカ』をプレイされている皆さんはご存知だと思いますが、奏の好物がカップ麺ということもあって、今回のコラボのお話をいただいたとき、やはり真っ先に浮かんだのは奏でした。 ──楽曲を作られたクリエイターさんも豪華な顔ぶれですが、これはどうやって決まったのでしょうか? 佐々木氏:  こういったものに対応していただくのはなかなか難しいので、バランスは考えました。初めましての方にお願いしつつ、難曲については気心の知れた方に頼っちゃいましたね。初対面のボカロPさんに「徳川カップヌードル禁止令」みたいな曲を作ってくださいとは、さすがに言えないので……(笑)。 ──ということは佐々木さんとしては、安心して任せられる方々という感じなんですね。 佐々木氏:   いやでもやっぱり、ファミマさんやNewDaysさんの件でご一緒してきた、ピノキオピーさんであっても「カレーはお好きですか?」「そこにモチベーションは持てますか?」みたいな会話から入ったので(笑)。わりと手探りですよね。  また、DECO*27さんやピノキオピーさん、Mitchie Mさんといった、既にプロセカに参画いただいているクリエイターの皆さまのほかにも、Z世代を中心に絶大な支持を受けているKanariaさんやくじらさんにもこの機会にご協力いただきたいと思い、「若い子たちが夜にネットサーフィンしながら、カップヌードルを食べているときに聞きたくなるような楽曲」というテーマで打診させていただきました。みなさん快諾いただいたので、とてもありがたかったですね。  Kanariaさん、くじらさんへの依頼は意外な部分もあったと思いますが、こういう企画だからこそ、おふた方の「クリエイティブの迫力」が伝わる形になったのかなと思います。 近藤氏:  結果的に、反響はとても良かったので。 ──「アイデンティティ」や「サラマンダー」のように単体の楽曲としての魅力が強く出ているものもあれば、「徳川カップヌードル禁止令」みたいにニコニコのMAD動画みたいな味わいのものもあったりと、すごくバラエティに富んでいると思うのですが、楽曲の方向性はボカロPさんにお任せだったのですか? 佐々木氏:  完全にお任せというよりは、「ちょっとこの要素を入れていただけませんか」「減らしていただけませんか」とか人によっては「突き抜けた感じで、思い切って頂けませんか?」というのを調節させてもらった形ですね。その作家さんの個性と違ったものになると、ファンの方々はそれを敏感に読み取るので。こういうタイアップで過去に、注目度がガクンと落ちちゃったりしたこともあったので。そこはヒヤヒヤしながらやらせていただきました。  でも逆に日清さんのほうでは、宣伝らしさみたいなものを求めるスタッフさんもいらっしゃったんです。なので「これは宣伝要素があまり感じられないかもしれないですけど、後から“徳川カップヌードル禁止令”っていうスゴイ曲が来るので」と説明して(笑)、なんとか納得していただいたというのがありましたね。 ■ボカロ出身のアーティストさんとのコラボは、あくまでスペシャルな企画です ──企業系のコラボとは別に、アーティストさんとのコラボも続いています。そこではAdoさんといったボカロと隣接しているけれど、明確にボカロとは言えない音楽をセレクトされていて、『プロセカ』で扱う音楽の範囲が広がったような気がするのですが? 近藤氏:  あくまでタイアップ、コラボレーションという立ち位置なので。『プロセカ』に収録する楽曲範囲を広げたという話ではなくて、本当にスペシャル企画ですね。  もともとインタビューとかでも言っていたんですけど、僕らとしてはボーカロイド音楽だったり、ネットシーンの音楽っていうものを若い人たちに届けたいと思っていて。そこには「ボカロ」と「ネットシーン」という2つの音楽が含まれているんです。なので、そういった隣接した音楽にも触れられるほうが、若い子にとっては親しみやすくなるかもね、という話はこの3人でもしていたので。そこはけっこう予定の範囲内という感じではあります。  ただじゃあ、そういった隣接している音楽を『プロセカ』の第二の柱にしていこう、みたいな感じではなくて。僕らもボーカロイド音楽で入れたいと思っている楽曲だったり、ユーザーさんが本当に入れてほしい楽曲がまだまだたくさんありますから。今後も隣接した音楽、ネットシーンの音楽をコラボレーション的に『プロセカ』で採り上げていくとは思うんですけど、でもそれが毎月あるだとか、収録曲の半分がそうなるということではありません。 ──2020年ぐらいからボカロPの方や「歌ってみた」出身の方が、J-POPの第一線で活躍されるようになっていて。先ほど近藤さんが言われたネットシーンの音楽というものが、世の中の真ん中のほうに来ている実感があると思うんです。ただ『プロセカ』としては、そこまでいくとちょっと広がりすぎなのかな、みたいな印象も受けるところがあって。 近藤氏:  そうですね。そっちに行っちゃうんじゃないかという不安を抱いているユーザーさんもいるんですけど、「行かないですよ」という話です。ただ、『プロセカ』の最初の目的はボカロ曲を若い人たちにも聞いてほしいなというものなので、そこにはいろんな入口があるというのも必要なことだと思っています。  ボカロっていうのをあんまり聞いたことはないんだけど、今の音楽シーンにいるボカロPの人たちの音楽がすごく好きだ、という方がそこを入口として入ってきて、「ボカロも食べてみたら美味しいよね」みたいになるのは、僕らがやろうとした目的に沿っているはずなので。  ただ、それはあくまで小っちゃい入口なので、そこは適宜やっていきますけど、それとは別にメインとなる大きなトンネルもちゃんとやっていく、という意識を持っています。 佐々木氏:  こういう言い方でいいのかわからないんですけど、J-POPに浸透していってるボカロっていうのもあれば、たとえばsasakure.UKさんとかワンダフル☆オポチュニティ!さんだとかの言葉遊びの感じとか切り取り方の感じって、どんなJ-POPの方に声をかけても、あんなにキラキラした感じで出てくるものではないと思っているんです。  『プロセカ』にストーリーだったり、キャラクターをどう見せるかという課題がある中で、言葉使いが個性的な方であればうまい方であるほど、「こんなに練ってきてくれたんだ」みたいなところが凄まじいなと思っていて。それが僕の中では、『プロセカ』の素晴らしいポイントのひとつなのかなと思います。掛け算による相乗効果感というか。  そういうボカロならではの個性って、決して単一のものではなくて、たくさんのユニークな部分があると思うので。そういったものをいろいろと感じ取ってもらえるようなバランスっていうのが、『プロセカ』と相乗効果である種のボカロネットシーンを、暖かい雰囲気で作るのが重要なのかなと思っています。 近藤氏:  sasakureさんもワンオポさんもすごく昔から活躍されてる方なので、このタイミングでまたとても再生されているのは、嬉しいですよね。 佐々木氏:  やっぱり楽曲の密度が高いので。小菅さんも「これをMVにすると、演出のところが濃くなるなぁ」って思われて、きっとコストがかかってるんだろうなあと思うのですが(笑)。 小菅氏:  でも、現場が楽しそうなんですよね、ああいう曲って (笑)。 佐々木氏:  あぁ、それはありますよね。カッコ良い方向性だけだと、どうしても閉じていっちゃうところとか、先鋭化されちゃうところがあると思うんですけど。でも一方で、「わーい!」みたいな気分で作らざるを得ないものもあって(笑)。それが『プロセカ』らしいところだなぁと。 ■今の5ユニット20人だけでは、すべてのボーカロイド音楽が当てはまらなくなる日が来るかもしれない 近藤氏:  キャラクターと音楽の相乗効果って、確かにあると思うんです。そこでキャラクターをひとつのマテリアルだったり、属性みたいなものだったりとして考える時に、今だったら『プロセカ』にはオリジナルキャラクターが20人、オリジナルユニットで言えば5ユニットいて。その中で、それぞれのユニットやキャラクターの音楽の属性みたいなものは、幅広く解釈すればたぶん全ての楽曲に当てはめられるとは思うんです。  でも幅広い解釈じゃなくて、バチコーン!とハマるかどうかって考えると、5っていう数字や20っていう数字の限界みたいなものを、僕としてはどこかで感じていて。なので……いずれは増えるんだろうなぁ、みたいなのを感じてはいます。 ──それはキャラクターやユニットがいずれは増える、ということですか? 近藤氏:  もちろん、すぐ増えますよって話ではなくて。ただ、検討されて然るべきだと思っています、という話ですね。  そもそも、ボカロシーン自体がかなり流動的なので、その時に人気のある音楽の系統が、すごく移り変わってくるじゃないですか。僕らがこの企画を始めて、ユニットの音楽性を割り振った2018年から、もう4年経っているんです。なので、その間に音楽の流行りとかネットユーザーの好みみたいなのも、変わってきていると思うので。  このジャンルはとても多いとか、このジャンルは少ないとか、今までのものでは形容し難いものも見えてきたよね、みたいな話が出てきた時に、無理やり今のユニットに幅広く解釈して入れ込むよりは、何か新しいものが出てくるほうが自然なのかなと、僕は思っています。 ──今の5ユニットではハマらない音楽ジャンルがあると? 近藤氏:  今でもハマるけどもっと適切に割り振れる可能性がある、といったイメージです。それでも、一定かぶるのはしょうがないと思うんですよね。音楽ジャンル自体、ほぼ無限みたいなものですし。でも時代の流れに沿って、こことここの間にあるボールをひとつ、数字にしちゃったほうがいいのでは、みたいな話は検討したほうがいいと思っています。 佐々木氏:  音楽ジャンルの多くは洋楽由来のものだったりするので。HIPHOPだ、R&Bだって、それをそのまんまやるのはただの落とし穴にしかならないという意味で、音楽ジャンルという括りは危険だな、と思うところがあります。好きなんですけどね。  違う角度で、ニーゴのシリアスさってのも並んでいるし、やっぱり色んなテイストがあって、バラエティが多彩であるが故の力強さがあるなと思います。 近藤氏:   ユニット毎のジャンルを固定しすぎてしまうと、逆にクリエイターさんの枷になってしまう可能性もあると思うんです。なので理想としては、いろんなボカロ界隈のクリエイターさんとご一緒する時に、クリエイターさんのほうから「このユニットがいいです」みたいな感じでどんどんハマっていく、っていうのが有り難いですよね。 ──今現在、クリエイターさんのほうから「このユニットで書きたいんです」みたいな話がでることもあるんですか? 近藤氏:  わりとありますね。我々のほうから「どうですか?」ってお話を持っていくと、「このユニットがいいです」って言われたりして。 ──そういう意味ではすでに、クリエイターさんの中で『プロセカ』のキャラクターのイメージができているところもあるんですね。 小菅氏:   そうですね。ローンチ前の頃は、すごく迷われてる感じの方もいたんですけど(笑)。今はゲームだけでなく、お客さんがそのキャラをどう見ているかというのも掴んでらっしゃると思うので、そういう意味では広がったんじゃないかと思います。 佐々木氏:  クリエイターさんによって、ユニットとかその回のイベントのテーマを分析して、客観的に見ていって、どんどん計算して考える人と。自分の世界にグーッと引き寄せてバランスを取ろうとする人と。わりと両極端ですよね。見ててスゴイなって、いつも思います。 ■バーチャル・シンガーの音源に関しては今後、可能な限りバランスを取るようにしていきます ──ところで、2022年2月22日に公開されたプロジェクトメッセージで「一部のバーチャル・シンガーに、原曲を歌唱する楽曲の追加が遅れている」というお話が出ていましたよね。この点についての具体的な状況や、今後についての詳細をお聞かせください。 近藤氏:  特にルカさん、MEIKOさん、KAITOさんの楽曲の追加が遅れているところですね。リリース直後はKAITOさんの「ドクター=ファンクビート」が、MEIKOさんの「Nostalogic」があったりしたんですけど、それ以来楽曲が追加されていなかったのを、僕らのほうで省みまして。今後はこのぐらいのペースで追加していきますというのを、プロジェクトメッセージという場を借りて明言させてもらいました。  そこに書かれているとおり、年に2曲は追加していこうと思っています。それは既存の楽曲の制作とは別のラインでやるので、そちらのほうに影響が出ることはありません。あと、再生数で考えると収録できる楽曲はそんなに多くないのでは、みたいな声も届いているんですが、ここに関してそれはぜんぜん関係がなくて。このゲームを作っている以上、各キャラクターを大事にしなければいけないという、シンプルにそれだけの話なので。  それからバーチャル・シンガーver.はもともと、原曲バージョンだけというわけではないんです。原曲とは別のバーチャル・シンガーで歌い直すというものを、本当はもうちょっとたくさん作っていく予定でした。でも、リリースからずっとバタバタしていて、ハッピーシンセサイザのようなバーチャル・シンガーver.がなかなか追加できなかったので。そういった影響もあって、一部バーチャル・シンガーの音源が少なくなってしまっていました。そこは両方対策をしなきゃいけないというところで、クリプトンさんも含めて一緒に進めております。 ──原曲ではないバーチャル・シンガーの歌唱に関しては、技術的・工程的な部分で大変なところもあるかとは思うのですが、そういうところが追加のペースに影響していたのでしょうか? 佐々木氏:  この機会に懺悔してしまうとですね。やっぱり『Project DIVA』の当初から「主人公ってミクだよね」というようなところが一方ではありつつ、広がりという意味では6キャラで力を合わせてバラエティを作ってくれていた、という構図があったんです。その時に我々クリプトンであったり、昔のセガさんとのビジネス的な観点の中で、「ここまではミクの殿堂入り曲を入れて、たくさん聴かれている楽曲を中心にしていきましょう」みたいな感じでついてしまったクセのようなものがあって。今回『プロセカ』を立ち上げるところでは、そのクセをいったん取り払うことも含めて、「いろんなところにキャラクターが出てきて活躍しますよ」という触れ込みでやらせていただいたんですけれども。  ただ正直、ローンチ前のバタバタ感とか不可抗力みたいなのもあった中で、そこの部分で追いつききれていなかったのと、自分たちが全部のバーチャル・シンガーを推していきますというところで、バランスが一部うまく取れていなかったと思います。  とはいえ、自分たちが全部のキャラクターのバランスを見て楽曲を紡いでいくというのは、最初に宣言させてもらったことですから。それを疎かにして別のことをやるとか、そんな意図はまったくありません。言い訳ですけど、そういう意味ではむしろ相当な啖呵を切ってここまで来たので、それはこの先も続けていきます。気持ちの面ではそういうことでしかないので。そのあたりをこれからも見守ってもらえるとありがたいです。 ──念押しになりますけど、先日のプロジェクトメッセージでアナウンスされたということは、今後は改善されていくという宣言だと考えていいですよね? 近藤氏:  そうですね。ただ、これはお伝えする必要がありますが、『プロセカ』の目的は何度もお話ししているように、若い人たちにボーカロイドやネットシーン発の音楽を聴いてもらうというものになっています。そこに基本的なサイクルの中で収録される楽曲は、どのボーカロイドが歌っているかということは一切関係なく、言ってしまえばクリプトンさんのバーチャル・シンガーなのかどうかも関係なく、かなりフラットに決めている状況です。  これは、ボカロ曲というものをバーチャル・シンガーによるキャラクターソングとしてではなく、クリエイターが作り上げた一つの音楽作品として取り扱い、シーンを彩った様々な年代の楽曲を収録していきたいという想いによるものです。  ただ別軸で、しっかりとキャラクターのことを配慮した楽曲収録もしていく必要はあり、その点は切り分けて考えています。  結果として、例えばミクさんの楽曲収録数に対して他のピアプロキャラクターの曲数を合わせられるかというと、シーン全体における楽曲の総数を考えると現実問題としては難しく、ご理解いただかなくてはいけない部分もあるのですが、その上で僕らができることとして、バーチャル・シンガー全員に最低でも年間でこれだけの楽曲数は入れさせてもらいます、という宣言をさせていただきました。  そのために僕らが優先的に取り組んでいけるところとしては、まずは原曲の収録ですね。バーチャル・シンガーver.のアナザーボーカルに関しては、追加ペースをオリジナルキャラクターと同じペースになることを中長期的な目標にしています。  ただ、これは追いついていくのが少し時間がかかるので、いったん見守ってくださいというフェーズになります。でも、スピードは上げていきますので。 佐々木氏:  近藤さんが今言った、線を引いて「ここまではやります」っていうのもありますし。たとえば他社さんだとAIシンガーの可不さんみたいに、シンガーの魅力を伝えるためにいろんな方に曲を作ってもらうことをお願いして回るような、逆の方法論もあると思いますし。  『プロセカ』の登場で明らかに状況は動いていて、わりと有名なボカロPさんから「MEIKOでオリジナル曲を作りたいんだけど、相談に乗ってもらえないか」と声をかけてもらったりもしているんです。  常日頃ミクで作り続けているとなると、違うシンガーで1曲目を書こうとした時に、なかなかコツや勘が掴めない、というので二の足を踏んでしまう状況があるのかなと思うんですけど。そういったところで今、いろいろなクリエイターさんとコミュニケーションしている状況です。先ほど話題に出たカップヌードルコラボで、くじらさんがルカやMEIKOも歌う曲をお願いしているので、今後はそういった形でもバランスを取っていけるのかなと思います。 近藤氏:  あのメッセージを出す数ヵ月前からやることは決まっていたのですが、具体的に1年で何曲追加できるんだろうとか、いつから追加できるようになるんだろうみたいなことがはっきりしたので、あのタイミングでメッセージとして出させてもらった形ですね。 ■2周年に向けた展開 ──ここからは、2周年に向けた今後の展開について伺いたいと思います。  1周年の時に発表された完全リアルタイムのバーチャルライブ「コネクトライブ」は、2021年12月に最初のリハーサル公演が開催された後、次の公演が4月以降に延期されてしまいましたよね。実際のところ、今後どのように開催されていくという予定はあるのでしょうか? 近藤氏:  1回目のコネクトライブをリハーサル公演という形でやらせてもらって、それは負荷の検証が目的だったんですけど、やっぱり負荷がちょっと厳しかったんです。でもその改修自体は、じつは1ヵ月ぐらいで終わったんですけど……。  コネクトライブが大変なのは、キャストさんを含めたさまざまなスタッフを数日間拘束しなきゃいけないところで。じつはそっちのスケジュール確保が一番大変で、それで時間がかかっているというのがあります。  今は、4月に第2回リハーサル公演をやって、それが終わったら2、3ヵ月後には本番をやりたいなという話をしています。ライブの制作自体はどんどん進んでいて、検証さえ完了すれば、あとはできると思うんですけどね。 ──今のお話だと、コネクトライブは開催自体が相当に大変な感じなのでしょうか? 近藤氏:  大変は大変ですけど、これまでは見通しを立てられなかったというのがあるんです。いったんシステムが確立してしまえば、テクニカルリハーサルをこの日にやって、それが終わった2週間~1ヵ月後に2日間スケジュールを押さえて、1日目は直前リハーサルで2日目に本番、っていう感じで予定が組めるんですけど。今はまだシステムが固まり切っていないので、スケジュールが変わる可能性があるので日程を押さえられないんです。  なので、次のリハーサル公演で安定したら、以降はシステマチックにスケジュールを組めると思います。開催頻度も上げられると思いますし、今よりは絶対楽になると思います。 ──単なる素人考えなんですけど、コネクトライブってやっぱり負荷が大変なんじゃないかな? と思うのですが。実際、1回目をやられてみてどうでしたか? 近藤氏:  いやぁ、やっぱりキツかったですね(笑)。  そもそも毎日の同時接続人数が本当に多いので、かなりの対策をして望んだのですが、サーバーインフラというよりは、内部のロジックでなにか引っかかってるとダメ、みたいなことがあったりして。単純にサーバーを増やせばいいっていう話でもなかったりするんですよ。しかもそのロジックの引っ掛かりが、アクティブユーザーが150万人だったら検知できなかったんだけど、200万人になったら検知できる、みたいな感じで大変なんですね。見えない罠がけっこうあるというか。 ──でもやっぱり、そこまでスゴイことをやられているんですよね。 近藤氏:  かなり突き詰めてますね。これをクリアしたら、もう怖いものなんかないんじゃないか、っていうくらいです(笑)。今は乗り越え時というか、がんばらねばという感じですね。 ──ボカロ関連の技術ってこの十何年の間、未来の先取りみたいなニュアンスがあったと思うんですけど。コネクトライブもまさに、同じような匂いがするんですよね。 近藤氏:  そうでしょうか。ただ、想像の7倍くらい大変でした(笑)。  でもまぁ、ユーザーさんもみんな喜んでくれるだろうしやろうか、みたいな感じですね。ちゃんと動けば本当に良いものになる自信はあるので。 ──楽しみにお待ちしております。 ■ボーカロイド音楽の一歩先に踏み込めるきっかけになるものが、ゲームの外側にも必要だ ──『プロセカ』のWEBラジオとしては今、ニーゴの「25時、ナイトラジオで。」と、クリエイターさんをメインにした「セカイ・ステーション」という2つの番組がありますよね。ちなみに、ニーゴ以外のユニットのWEBラジオ番組が開始される予定はありますか? 近藤氏:  今のところはないですね。WEBラジオ以外にも、各ユニットの名前を冠した企画がそれぞれにあって。たとえばビビバスだったら「ビビバスアーカイブ」をやっているんですけど。もし仮に、ユニット単位の新しい企画が始まるとしたら、今やっている企画の代わりにやることになると思うんです。  たとえばモモジャン(MORE MORE JUMP!)は、これまでボイスドラマをずっとやってきたんですけど。でも、SHOWROOM配信の反応がすごく良かったので、今は配信にスイッチし始めているところです。 ──配信ですか。それはそれで、本物のアイドルっぽいですね。 近藤氏:  そんな感じで僕らもいろいろ試行錯誤をしています。一回始めたものをずっとやり続けていくとなると、それが逆に足枷にもなってしまうので。僕らとしてはより良いものが出てきたら、それをやっていくべきだと思っていますし。そのほうがユーザーさんとしても新しいコンテンツを楽しめると思いますから。 ──なるほど。では、ユニット単位の企画とは別に、新たなWEBラジオとして「セカイ・ステーション」を始めた狙いは、どんなところにあるのでしょうか? 近藤氏:  今日の冒頭で言ったように、「ボカロ曲を聴いてもらう入口になるだけでなく、その先にもう一歩進むことができるような企画が必要だ」と思ったからです。  『プロセカ』というゲームを好きになってもらったけど、でも案外ボカロってよく知らないよねとか、クリエイターさんってよく知らないよね、成り立ちも含めて知らないよね、っていう人たちがけっこういるんです。そういった人たちがクリエイターさんに興味を持ったり、『プロセカ』に収録されてない楽曲も聴いてみたいとか、そうやって広がっていけばいいなと思って、立ち上がった企画ですね。  なので、パーソナリティの清水藍さんも、ボカロのことについて聞かれればなんでも答えられるぐらいの方がいいなということで、僕のほうで決めさせてもらいました。 ──DECO*27さんやsasakure.UKさんといったクリエイターさんが出演されているのも、そうした意図からですか? 近藤氏:  そうですね。でもクリエイターさんを必ず毎回出したいわけでもなくて。ボーカロイドシーン、ボーカロイド音楽を包括的に触れられる番組になればいいと思うので。ずっと隠れた名曲を流し続けるみたいになってもいいと思いますし。何か入口になればというプランの中の一個という感じですね。 ──『プロセカ』と目的は同じなんだけど、よりボカロ文化全体にフォーカスした番組というわけですか。 近藤氏:  どちらかというと知識とかのほうに寄ってますかね。『プロセカ』だけを遊んでいても、ボーカロイド界隈の一歩深いところには、自分で行こうと思わないと行けないので。  『プロジェクトセカイ』の楽曲を作ってくれた方々の紹介だったり、原曲の絵を描いてくれたイラストレーターさんはこういう方で、動画師さんはこういう方で、みたいな話も含めて、それがボーカロイドシーンだと思っているので。そういうものをゲームの外にも置く必要があるかな、と思ったんです。  「セカイ・ステーション」のラジオだけでは足りないと思ってはいますが、まずできる手段の一個として始めたもので、今後もやり続ける必要があるとは思っています。 佐々木氏:  ちょっとだけ補足というか、昔話をさせてもらうと、過去にもクリエイターさんを紹介していくとかの動きが、メディアさんも含めていろいろあったんですけど。自分の記憶の範囲だと、クリエイターさんが主人公って形で取り上げるにしても、ミクが歌っているって形で取り上げるにしても、「そういう冠で括られてしまうのはどうかと思う」という議論が、今までずーっとあって。僕らもそれが、いい意味でずっと問題提起としてあったんです。  今、『プロセカ』に関して意見をいただいている方々にあえて回答させていただくとしたら、ミクが主役なのか、他のいろんなキャラクターのピックアップのされ方がどうだということは、人それぞれ感じ取られるとは思うんです。けれども『プロセカ』の中で、いろんな方がいろんな形で楽しんでらっしゃる状況がある中で、我々としてはいろんなものを紹介していく。いろんなものが素晴らしくて、まだまだいろんな曲があって。1選ぶ中で999取りこぼしてるくらいの感覚のなかで、自分たちはコツコツやり続けることが、いちばん重要だと思っています。  コツコツやり続けるから、また思いがけない誰かが、ボカロ曲とかクリエイターさんとか何か音楽の側面にハマってくれたり、キャラクターを好きになったりということが続くわけで。やっぱりそこを見ていくしかないんです。  近藤さんもいろんな側面から考えてくださって、バランスとかっておっしゃってくださっているんですけど。僕らとしても何が進むべき方向なのか、なんとなくはわかってるつもりなので。それを今後も続けていきますし、「セカイ・ステーション」も発展していくんだろうなと思っています。 ■これから2周年に向けて、ゲームとして「次」に進むための土台を強化する時期にしていきたい ──そろそろ時間が迫ってきましたので、最後に『プロセカ』のゲーム自体が今後。2周年に向けてどういう方向に向かっていくのかについて、お聞きしたいのですが。 近藤氏:  まず、『プロセカ』におけるリズムゲームを、長い目で楽しんでいけるようにすることが必要だと思っています。  1.5周年で追加されたのが「ランクマッチ」ですね。それが遊びとしてはひとつ、大きな変化としてあって。  あとは今後2、3ヵ月ぐらいをかけて、けっこう細かい改善をしていくと思います。2月のアップデートを「マイナーアップデート」と呼んでいたんですけど、そうした細かい改善を1.5周年の後は少しやろうと思っています。ゲームとして「あったらいいね」的な改善を、これまで時間をかけてはできていなかったので。  そこから先に関してはまた、新しい遊びの開発と改善をやっていく感じですね。あとは土台を強くするという面で、サーバー負荷を耐えられるようにするとか、そういうこともちゃんとやっていきます。 小菅氏:  さっきのジャンル分けの話じゃないですけど、『プロセカ』の設計は2018年ぐらいから話をしているので、4年前とかのものなんです。3Dの表現もそうですし、ゲームのデザイン面とか使いやすさとか、そういうところもテコいれしていかなきゃいけないので。これからは、さっき近藤さんが言った細かいアップデートをやりつつ、その先の大きなアップデートを準備する時期になるかなと思っていて。健全な運営ができるように注意しつつ、着々と進めています。 ──シナリオについてですが。これまで1年半続いてきて、ビビバス(Vivid BAD SQUAD)のほうでは「RAD WEEKEND」の話が出てきたりして、各ユニットのストーリーがかなり進展してきたように感じます。ユニットごとにそれぞれの目標があると思うのですが、そろそろ目標達成というか、終わりが見えてきたりするのでしょうか? 近藤氏:  ストーリーに関してはリリースの時点から、それぞれの終着点みたいなものは決まっていて。そこに向かうマイルストーンもある程度決まっているので。あとは書きながら、時には寄り道したりということをやっています。  ただ、今見えているゴールにもうすぐ到達します、みたいな感じでもまだ全然ないですし。それに今見えているゴールをクリアしたらストーリーが終わってしまうかというと、それはまた違う話になるのかなとね。むしろ僕らとしては、書きながら「これはまだまだかかるぞ……」みたいに思っているので(笑)、まだしばらくは終わりは見えないと思いますね。 ──今明確にあるゴールに到達するのもある程度時間がかかるし、たとえそこに到達したとしても、さらに新しい目標みたいなものは出てくるかもしれない、ということですか。 近藤氏:   そうですね。どのユニットもまだまだ物語の先を考えていて。終着点はまだ先の先という感じですね。 ──音楽面に関しては、2周年に向けていかがでしょうか? 佐々木氏:  セガさんからいろんな作家さんに依頼していただいているんですけど、一度オリジナル曲を書いてくださった方でも2回目ってなると、さらにアイデアだとか切り口の部分で、クリエイターさん方のお気持ち的にも盛り上がってくれるところがあるんです。「あの曲よりも攻めてやろう」みたいな部分も含めて。 ──そういう意味では、すでに登場しているクリエイターさんでも、また切り口の異なるオリジナル曲で参加されることも期待できそうですね。 佐々木氏:  冒頭の話と被るんですけど、1周年まではどういうふうに『プロセカ』が受け入れられるのかな、ということを心配していたんです。でも今となっては2周年と言わず、もうちょっと中長期的なところで、どういう体制であるとか、発展的なことをしていくべきか、みたいな話をおふた方とさせていただくことが多くなっています。  中期的に見た時に、じゃあ2周年、2.5周年ぐらいには音楽的なところを含めて、ちょっとずつ変化とか驚きみたいなものがなきゃいけないかな、と思っていまして。そのためにも我々は、あまり凝り固まって今のスタイルを保持しすぎてもダメでしょうし、逆に変えすぎてもダメだと思いますね。(了)  取材の中で何度か話題に出たように、『プロセカ』はバーチャル・シンガーを扱ったリズムゲームというだけでなく、今の若い世代にボーカロイド音楽に触れるための入口となることが意図されている。  『プロセカ』が1.5周年を迎えた現在、高校生から圧倒的に支持されるゲームとなった一方で、『プロセカ』の登場と並行するようにして、ボカロPや「歌ってみた」出身のアーティストがJ-POPを席巻するようになったことは、ある意味、その当初の目的を果たすことができたと言えるのかもしれない。  だからこそ、『プロセカ』が「次」にどういった方向へ向かうのかは、非常に気になるところだ。『プロセカ』から生まれたオリジナルのボカロ曲が、TikTokなどを通じて世の中に広く拡散されるようになった現在、今後の『プロセカ』の動きはある意味、ただ単にゲームの中に留まるものではなくなるかもしれない。その意味でも、『プロセカ』の今後の動きには、引き続き注目していきたい。
電ファミニコゲーマー:伊藤誠之介
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