宮城と沖縄。高度経済成長期の高揚を地方の視点で振り返る【what to do】 – marie claire

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「欲望の昭和」展で再現された男子学生の部屋。子供の頃、友人の家へ遊びに行って、ビールケースのベッドがあり、少しだけうらやましい気がしたことを思い出した(撮影・高橋直彦)
2022.9.4 / marie claire
知的好奇心にあふれる『マリ・クレール』フォロワーのためのインヴィテーション。それが”what to do”。その時々の参観すべきトピックを取り上げて紹介する。今回は、戦後地方の高揚感について。とりわけ消費文化が花開いた高度経済成長期に注目したい。これまでも、東京五輪や大阪万博などを通して、大都市の視点で、当時の熱気が語られる機会は多かったが、地方はどうだったのか? そうした疑問に答える優れた企画展が宮城と沖縄で開かれている。
この夏、東北をふらりと旅して、街で面白そうな企画展のポスターを見かけた。JR仙台駅から東北本線で約14分、国府多賀城駅に隣接する東北歴史博物館(宮城県多賀城市)で開かれている「欲望の昭和~戦後日本と若者たち~」展。懐かしい雰囲気をわかりやすく強調したポスタービジュアルから、企画会社の持ち込んだレトロ系の催事ではないかと少し不安になったが、杞憂だった。
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タイトルで「戦後日本」と広く構えているが、実際の展示は「東北」や「仙台」にも焦点を当て、「地元」の視点で戦後の消費文化を丹念に紹介してあり、見応えがある。例えば、1970年に開催された大阪万博に先立って、67年に仙台市で開かれた「東北大博覧会」を紹介。在日米軍のキャンプ跡地が会場で、テーマは「未来をつくる科学と産業」。観客動員目標を最低80万、最高100万と想定したが、実際には127万人が訪れた。会場の写真からも、経済成長期の仙台の熱気が伝わってくる。
さらに地元放送局の開局資料や、地元ラジオ局の深夜放送に寄せられたリスナーからのはがきなども展示してあり、見ていて飽きない。82年に大宮-盛岡間で開業した東北新幹線についてもコーナーを設け、当時の記念入場券や湯飲みなどを通して、その盛り上がりを感じられる。仙台駅周辺に相次いでオープンした百貨店などの商業施設についても紹介。地元百貨店のチラシや新聞広告なども見ていて楽しい。
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圧巻は、80年代の男子学生のものと思われる個室の再現。ビールケースを並べて作ったベッドや壁に貼ったアイドルのポスター、そして洋楽のレコードジャケット。ベッドの枕元には男性誌もこっそりと忍ばせてある芸の細かさ! 恐らく、50代以上の人には懐かしく感じられるのではないか。当時を知らないスマホネイティブの世代も海外の風俗でも見ているような雰囲気で興味深そうに展示を見つめていた。確かに雑多なモノを通して、タイトルにもある「昭和の欲望」の有りようがダイレクトに伝わってくる。
展示資料目録に掲載された点数は342。もっとも、「懐かしの映画ポスター」は目録では1点としてカウントされているが、実際には15点のポスターが展示され、参考展示品も多いことから実際の展示点数はさらに増えるはず。喫茶店のマッチや映画ビデオのジャケットなど、個人蔵のものも目立ち、よくこれだけ集めてきたものだと恐れ入る。「公的な機関によってアーカイブされていない展示品も多い上、頼みの個人コレクションも東日本大震災の時に被災して、ゴミとして捨てられてしまったケースも多い」と企画を担当した同館主任研究員の渡邊直樹さんは話す。同展は9月11日まで。関心のある人は見逃すと後悔しかねないので、何とか機会を作って宮城へ急いでほしい。
そして、宮城から直線距離で1800キロ以上南下。今年、日本復帰50年になったのを記念して沖縄でも72年以降の沖縄の歩みを振り返る企画展が相次いで開かれている。那覇市の沖縄県立博物館・美術館もその一つ。「復帰50年特別展 沖縄復帰後。展-いちまでいん かなさ オキナワ-」が9月19日まで開催中だ。
実は同展に先立って、「希(こいねが)う、未来。復帰 前夜――。」展も8月21日まで開かれていた。いずれも偶然観ることができたが、概説書などを通して知った沖縄の近現代史の平板な知識が、様々なモノを通して立体的に浮かび上がってくるのが印象的だ。
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展示は、72年5月15日の復帰記念式典の映像から始まり、75年の沖縄海洋博のユニフォーム、そして2000年代以降の連続テレビ小説「ちゅらさん」の放映や安室奈美恵さんらの人気による沖縄ブームについても、当時のポスターやノベルティーなどが展示してあって興味深い。コザで盛んだったディスコ文化の関連資料にも見入ってしまう。展示数は計約800点というから、沖縄県外の人にとっても、近過去の沖縄を体感できるまたとない機会になるだろう。
同館では、美術を通して戦後沖縄を振り返る「復帰50年コレクション展 FUKKI QUALIA (フッキ クオリア)―『復帰』と沖縄美術」展も23年1月15日まで開催中。また、8月末に終了してしまったが、那覇市歴史博物館では「タイムスリップ EXPO’75 『望ましい未来』から海洋博を振り返る」展も開かれ、沖縄県外では目にする機会の少ない海洋博がらみの充実した資料を実見することができた。
高度経済成長と言っても、その過程は地方によって実に多様なことがわかった。東京で暮らしていると気づきにくいが、日本の戦後の道のりは決して一様ではないのだ。日常生活で消費され、一見価値がないとされる大量生産品が、時を経ると時代を雄弁に語り始めることも、これらの展示を通して知った。世の中、「断捨離」ブームらしいが、将来を見通して、実感を伴って過去を振り返るためにも、消費財をあえて「捨てないこと」も大切なのかも知れない。と、理屈はここまで。難しいことなど考えなくても、いずれの企画展でも展示品を眺めているだけでも楽しめる。観覧者の関心に応じて広く優しく応えてくれる有意義な企画である。
東北歴史博物館
沖縄県立博物館・美術館
Profile
高橋直彦
『マリ・クレール』副編集長。1970年、小学校1年生の時に大阪万博を見に行って、大興奮した記憶がある。周囲の人気は今ひとつだったが、個人的に好きだったのがソ連館。その時の例えようもない楽しさから、75年の沖縄海洋博への参観も親にねだったが、叶わなかった。今回、沖縄で海洋博がらみの展示を観ていて、その時の切ない思いがかすかに甦ってきた。
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