大輪の花を咲かせ、ふっと消える打ち上げ花火に、エレキベース奏者ジャコ・パストリアスを思う。1970年代半ばにジャズの表舞台に現れるや革新的な演奏でスターに上り詰め、ベースを花形楽器に押し上げたかと思うと生活が荒れ、87年に35歳で世を去った。
人気バンド、ウェザーリポート在籍時の「ティーンタウン」(1977年のアルバム「ヘヴィーウェザー」収録)の躍動的な演奏が最高。サックス奏者ウェイン・ショーターもいい仕事をしていて「プ~ア~」「プヒッ、プヒッ」などと所々で短く出す合いの手が絶妙なアクセントになる。
同じアルバムの「バードランド」は口ずさみたくなるポップな曲で実際、ジャコは歌声も披露する。ジョー・ザビヌルのシンセサイザー、ジャコのベース、ショーターのサックスのリレーで盛り上げる出だしにわくわくする。手拍子とザビヌルのピロピロした演奏でフェードアウトするラストも良い。さまざまなミュージシャンがカバーした。特にマンハッタン・トランスファーはラストのピロピロ感も歌声で再現し面白い。
76年のソロアルバム「ジャコ・パストリアスの肖像」収録の「クル/スピーク・ライク・ア・チャイルド」はピアノ奏者ハービー・ハンコックとの速弾きの応酬が圧巻。R&Bデュオのサム&デイヴと共演した「カム・オン・カム・オーバー」のファンキーな演奏も印象深い。
ジャズの先人のほかバッハ、ビートルズ、ジミ・ヘンドリックスらの曲も取り入れ、多才ぶりを見せた。
かつて記者は晩年のライブでの「ティーンタウン」のバリエーションをよく聴いていた。ジミヘンの「パープルヘイズ」とつないだメドレー、ディープパープルの「スモーク・オン・ザ・ウオーター」を取り込んだギター奏者のソロからリレーする演奏などだ。これはこれで良いのだが、ウェザーリポートでの演奏を上回る「ティーンタウン」はないと考えるに至った。
以前はピンとこなかったソロアルバムを良いなと感じるようにもなった。遠回りをしてジャコの妙味にたどり着いたのだと思う。
ジャコへの評価は「復活していれば」という熱烈な神格化と「ここまでの人だった」という冷めた見方の両論ある。いずれにしろ瞬間的とはいえ、まばゆく輝いたのは事実。目を閉じて残像を味わいたい。
(志)
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