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LIVE REPORT
Japanese
Skream! マガジン 2022年12月号掲載
2022.11.02 @中野サンプラザ
Writer 石角 友香 Photo by 岩崎 真子、鳥居 洋介
“第7期。”brainchild’sにとって初のホール・ツアーは、新作『coordinate SIX』が纏っていた紛れもないロック・バンドの不変のマナーと、この5人だからこそ生まれる代替不可能な個性がついに、存分に発揮されたんじゃないだろうか。ここでは、まもなく15周年を迎える彼らの、ツアー・セミファイナルとなった東京公演をレポートする。菊地英昭(Gt/Vo)の長年のファンだけでなく、若い男性ファンも増え、現在進行形のバンドであることも証明する客席に、ダーク・ファンタジーを想起させるSEが流れ、新作の通奏低音とも言えるディストピア感溢れる「Brave new world」に突入するのだが、菊地のフライングVが放つリフを中心に組み立てられるアンサンブルはどの音、どのフレーズも聴き逃したくないセンスの塊だ。1曲目から重厚に攻めたあと、これまたイントロのギター・フレーズが、大航海に出るような気分を後押しする「On My Own」。ホールの音の良さが菊地のフレージングの精緻さを明確に伝えてくれるのが嬉しい。同じBPMでもグッとグラマラスでダークな「Heaven come down」では、渡會将士(FoZZtone)がハンド・マイクでメロディもラップ的なフロウも披露していく。音源以上に全員の抜き差しがしなやかな印象だ。

GS(グループサウンズ)っぽいマイナー・メロディとこれぞR&Rなギター・ソロを持つ「TWILIGHT」や、MAL(Key)のドラマチックなピアノと真紅のライティングが世界観を作り上げて、横乗りできるグルーヴィな曲にフックをつける「Black hole eyed lady」。渡會の自在に突き抜けていく節回しも、ライヴで体感すると彼が破格のヴォーカリストであることに笑いを禁じ得ないほど凄まじい。MAL加入以前のライヴに比べると、さらに全員が自分の色を出している。インタビュー(※2022年9月号掲載)でも話していたが、菊地のコードの手癖や進行を知り尽くしていて、しかも全員が好物だからだろう。そこに自分のセンスを投入することが楽しくて仕方なさそうなのだ。これはプレイヤー、ミュージシャン冥利に尽きるはずで、彼らの佇まいがよりバンド色を濃くするのも腑に落ちる。過去のメンバーからアレンジを変えながら引き継がれてきたインスト・ナンバー「PANGEA」では背景の銀幕が照らされ、まるで鉄の雨のよう。ここでもギターで醸し出せる荒涼としたサウンドが軸になり、架空のサントラの如き大きなイメージが響き渡った。嵐をくぐり抜けて生き延びたような感覚の中、メロディ・ラインそのものが癒しと鼓舞する力を持つ「WASTED」へ。菊地のヴォーカルの説得力に加えて、渡會のコーラスの精度が高い。この2曲の流れは前半の白眉だった。

ドラマチックな演奏といい意味でギャップを生む、菊地の”換気します!”というひと言と、”気にせず演奏してくださいって言われたんですが、EMMA(菊地)さんはピュアな心で(進行表を)読んじゃったんですね”という渡會の発言。MCでは普通の会話になるのも、brainchild’sという異なる世代や背景を持つプロジェクトの面白さだったりする。

ガラッと陽のムードに変わったブロックでは渡會のロング・トーンに唸り、全員が演奏で”歌える”ことを実感する「Flight to the north」、神田雄一朗(Ba/鶴)、岩中英明(Dr/Uniolla/MARSBERG SUBWAY SYSTEM)によるリズム隊のシンプルな8ビートだからこその、推進力のパワーを感じさせる「Higher」。さらにこれぞブリティッシュ・ロックでもあり、チェンバー・ポップ的な牧歌のムードも漂う菊地のヴォーカル曲「太陽の香り」という、シングルのカップリング曲も披露してくれる嬉しい場面も。こんなに様になるロック・バンドの3拍子の演奏を久々に聴いた気がするが、今回ツアー初参加のMALが活躍できるレパートリーという意味で納得。

さらに新作の軸を成す現在の混沌や混乱を表現しつつ、ブレイクや渡會の話すようなヴォーカル、菊地と交互に歌う様がアップデートされたロック・オペラの如き「Big statue ver.2」が、このバンドの底なしのタフネスを証明する。さらに押韻や言葉選びのユニークさが懐かしい印象もあるメロディをフレッシュなものに変化させる「Brainy」では、多彩な菊地のフレーズと渡會のこれまた変幻自在な表現が拮抗し、生身の人間のひらめきに圧倒されてしまった。オーディエンスの長い拍手に気持ちが溢れる。

彼らの手札の多さを実感させたのは後半、美しいピアノ・バラードで取り残されているような凧に渡會が自己投影する「Kite & Swallow」。互いの音をじっくり聴きながら演奏することで生まれる温かさが沁みる。少し前のレパートリー「君がいて笑って、」を今演奏することの意味も感じるし、2020年以降の現在のモードのきっかけになっている「Set you a/n」のノリの良さの中に秘められた、白黒つかなかったり、勝ち負けを決められなかったりする人生のリアルを歌える強さにグッときて感情が忙しい。その簡単に決めつけられないバンドのあり方を最も楽しんでいるのはステージ上のメンバーで、素直に楽しさが見てとれる。

なんでも今回のツアーでは渡會が菊地の足元にミニチュアの寿司を並べたり、この日もマイク・スタンドにミニチュアのカレーをくっつけたりして、菊地の反応を見ていたようなのだが、そんなわちゃわちゃしたムードすらこのメンバーだと全然浮かない。菊地の素顔が窺えるポイントとして歓迎されている節すらある。

終盤は、太陽の光を思わせる照明も効果的な「FIX ALL」でロック・バンドが作る16ビートのグルーヴを聴かせ、同じく16でもタイプの異なる「Phase 2」ではギター・リフと神田のスラップが冴えまくる。声出しがOKになったら一緒に歌いたいパートでは一斉に手が挙がった。そして加速するソリッドなR&R「Better Day to Get Away」では、渡會がイマジネーション溢れるリリックを自在なメロディで乗りこなしていく。

エンターテイナーっぷりを発揮する彼は、R&Rバンドのロマンをたっぷり含んだ「Rock band on the beach」で、アドリブで歌詞を”終演後の中野で僕たちが酔っ払ってても気にしないでね~”とアレンジし、メンバー紹介では菊地を”みんな大好き、八王子が生んだギタリスト&天然パーマ、EMMAさんだよ~!”と紹介するなど、徐々にお笑いモードに突入。オーディエンスに身振りをレクチャーする場面では、”これってドリフ(ザ・ドリフターズ)のアレだよな”と思っていたら、菊地が”ドリフ、もう4人いないんだよな。この話すると寂しくなるから、最後はわっち(渡會)が書いてくれた詞なんだけど、こんな世の中だけどいい風を吹かせよう。未来に向かって”と、つい今さっきまでの笑いに包まれたムードを演奏で転換する。遠く離れた誰かに同じ季節を生きていることを伝えるような「クチナシの花」をラストに選んだこと。それはまたライヴや作品で私たちは出会うことができるというメッセージだったように思う。予定調和のアンコールはなく、本編のみ20曲で作り上げた今回のツアーに本来のライヴの姿を見た。
菊地英昭(THE YELLOW MONKEY/Gt)がプロデュースするソロ・プロジェクト”brainchild’s”。第7期のメンバーに前期のメンバーでもあったキーボードのMALを追加した5人体制で活動を行っている彼らが、現体制としては初となるアルバム『coordinate SIX』をリリース。本作には、サウンド/歌詞ともに新しい世界への強い推進力を感じさせる「Brave new world」をはじめ、骨太なロック・サウンドで攻める「Heaven come down」、思わず身体が揺れるダンサブルなナンバー「FIX ALL」など全10曲を収録。なお、完全生産限定盤Bは近年需要が高まるアナログ盤で発売される。バラエティ感満載の楽曲群をお好きな形態で堪能してほしい。(山田 いつき)

ジョージ・オーウェルの”1984″がSFに思えないほどヒドい世の中だが、渡會将士(Vo)の固い押韻と、一気にタフに転換する「Brave new world」で幕を開ける、コロナ禍以降の彼らのストーリーテリングの底力を見せる、第7期初アルバムが完成。腰の座ったブギーでありつつ、MALのゲーム・ミュージック風の鍵盤使い、菊地英昭(Gt/Vo)と渡會の掛け合いで展開するサビがアップデートされたサーカス空間のような「Big statue ver.2」など、彼らだからこそ可能なロック・オペラ感も。一方、これぞUK! なメロディを歌う菊地が作品全体のグルーヴを担う「WASTED」の力強さと優しさ。絡まったままの凧を擬人化した「Kite & Swallow」での詩情も染みる。稀有なロック・バンドの最新型。(石角 友香)
THE YELLOW MONKEYのギタリスト EMMAこと菊地英昭のソロ・プロジェクト、brainchild’sの5枚目となるアルバムであり、バンド・メンバーに神田雄一朗(Ba)、渡會将士(Vo/Gt)、岩中英明(Dr)を迎えてからは初となるフル・アルバム。ひとりであることの自由度を生かして、バンド・サウンドの可能性を突き詰める菊地と、彼の想像をさらに超えてくる次元に各曲を連れて行くことができる、メンバーそれぞれの確かなスキルとセンスが噛み合っている。1960年代のロックンロール/R&Bや1970年代のグラム・ロックやパンク、1990年代以降のオルタナティヴ・ロックといった、ロックの歴史的文脈にあるプリミティヴで熱き衝動と、立体的で美しいサウンドスケープが見事に融合した力作だ。 (TAISHI IWAMI)
ハード且つソリッドなロックとひと言に言っても、これを2016年の今、シンプルにかっこいい!と直感するフォルムに定着できるバンドは少ないのではないだろうか。グラマラスにソリッドに自由に弾く菊地のギターとタメを張る渡會のヴォーカルと、瞬時にロックに出会った14歳の気分を思い出させてくれるTrack.1「Phase 2」、擬音の使い方がブッ飛んでいて強烈なTrack.3「群衆」、黒尽くめでかっこつけたロック・バンドのある種の滑稽さを歌うブギー・ナンバーTrack.5「Rock band on the beach」、ラフで素なギター・サウンドと胸に迫るメロディにTHE YELLOW MONKEYとのリンクも感じるラストの「春という暴力」まで一気に聴かせる全7曲。粋(意気)と笑いのセンスも十二分に味わえる。(石角 友香)
世の中がヤバい状態だっていうのは隠さずに言葉にしたい―― でも、その中にちゃんとユーモアが必要だなと思った
ソロ作で一番予想だにしていなかった作品になった、それがすごく楽しい
THE YELLOW MONKEYの解散前と解散後の”自信”、そのどちらでもないbrainchild’sのメンタリティとは
このプロジェクトには子供のころの自分が蘇った感じがあって。年下のメンバーとウマが合うんです
現体制での成熟とプロジェクトの歴史を見せるライヴが映像化
余裕に満ちた大人たちの純粋な感性 ソロ・プロジェクトを超えて生まれたバンドとしてのパワー
2022.11.02 @中野サンプラザ
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Skream! 2022年12月号

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