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「2022ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンに「きつねダンス」が選ばれ、授賞式後にポーズをとるプロ野球・北海道日本ハムのファイターズガールら＝東京都千代田区で2022年12月1日午後3時27分、三浦研吾撮影
12月1日に発表された新語・流行語大賞でトップテン入りするなど、今季のプロ野球を語る上で欠かせない話題になった「きつねダンス」。従来のプロ野球ファン以外の層も巻き込むブームを起こすのに一役買ったのが「パーソル パ・リーグTV」のユーチューブだった。制作するのはパシフィックリーグマーケティング（PLM）＝東京都中央区。2004年の球界再編を機に誕生したPLMは「スポーツ界の総合商社」を目指しているという。どういうことか。 【写真特集】ドーム最終戦まで人気の「きつねダンス」 きつねダンスの火付け役は、ソフトバンクでプレーしていた松田宣浩選手（現巨人）だ。4月下旬の日本ハム戦で、ファイターズガールが踊るきつねダンスをベンチでまねる姿が、中継で放映された。実は中継で松田選手が映ったのは数秒だったが、PLMの担当者は敏感に反応した。中継以外の映像を集め、新たな松田選手の踊りを加えてユーチューブにアップ。これが当たった。 PLMと日本ハムは連絡を取り合い、球団は選手による「踊ってみた」動画の作製や作曲者のアーティストを呼ぶイベントの開催、ファイターズガールのテレビ番組出演など精力的に動く一方、PLMもSNSなどで繰り返しきつねダンスを発信。この相乗効果がシーズン通してのブームにつながった。 PLMと球団のタッグについて、PLMの園部健二・最高執行責任者（COO）＝（38）＝は「これがPLMの強みの一つ。最近、メディアとしての媒体力がついてきたからこそ。昔ならどうだったか」と振り返る。 PLMの歩みを振り返ると、ある意味で「球界再編問題」が誕生のきっかけだと言える。04年にオリックスと近鉄が合併し、代わって楽天が05年に新規参入。一時は更なる球団削減や1リーグ化も画策され、12球団維持を訴える史上初の選手会ストライキにも発展した。この時期、パ・リーグは、まさに存続の危機にさらされていた。2年後の06年、パの球団幹部は毎月のように集まって「勉強会」を開き、リーグの先行きについて議論を重ねた。ともに連携して事業を展開し収入増に取り組む「リーグビジネス」が必要だという認識で各球団が一致し、07年5月に6球団の共同出資により「パシフィックリーグマーケティング株式会社」が設立された。 当初は球団職員が球団の仕事と掛け持ちしながら業務にあたったが、球団からの出向や社員の採用で基盤を固め、12年からPLMでパ6球団の試合の配信をスタートした。各球団の親会社ごとにさまざまな思惑があり、なかなか足並みをそろえるのは容易ではなさそうだが、園部COOは「ソフトバンクや楽天といったIT系の企業が参入したのが大きい」と指摘する。例えばソフトバンク。05年時、ともに試合映像の配信をすることを5球団に呼びかけ、パ・リーグTVの前身となるサービスを始めている。 「1球団だけならホームゲームしか放映できない。年間の半分しか試合が見られないならファンはお金を出さないだろう。6球団でやった方がいいこと、1球団でできないことをやるのがPLMの役割」と園部COO。また、PLMは出場するかどうかが不透明なクライマックスシリーズのスポンサーなども球団に代わって探している。「球団は既存のビジネスの重要度が高い。プロ野球のファンを増やすために新しいことはPLMがどんどんやっていく」と球団とPLMの役割分担を説明する。 昨年からはデジタルデータの所有権を証明できるNFT（非代替性トークン）事業に参入。「ライオンズコレクション」として西武・栗山巧選手の2000本安打記念パネルのデジタルデータなど球界初のNFT商品を販売した。 17年からは、スポーツ業界に特化した人材紹介サービスも行っている。スポーツ関係の会社の求人票を集め、スポーツ業界に興味のある人の面談を行い、これまでどんな仕事をしたのか、どういう仕事を希望しているかを聞き、それに合った会社を紹介する仕組み。球団やスポーツメディア、スポーツメーカー、ゲーム会社などとの業務で築いた関係や経験を生かした事業だ。 これらは、中継の配信など球団と連携して行う事業とは異なるが、園部COOは「我々はスポーツ界の総合商社をうたっている。ビジョンはプロ野球だけでなく、スポーツ界の発展。野球という一番大きい市場で培ったノウハウを他のスポーツでも転換できるのではないか」と強調する。きつねダンスブームのようにプロ野球界の枠を飛び越え、スポーツ界を盛り上げる旗振り役を目指している。【安田光高】
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