FINLANDS | Skream! ライヴ・レポート 邦楽ロック・洋楽ロック … – Skream!

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LIVE REPORT
Japanese
Skream! マガジン 2023年01月号掲載
2022.12.06 @KT Zepp Yokohama
Writer : 石角 友香 Photographer:はっとり、小野正博
“どんなに悲しいことがあって、弱い存在になっても、朝になると顔を洗って化粧して、飲みものを飲んで、ご飯を食べていた。生きていけるなっていう感覚を歌った曲です”と、中盤の「ハイライト」の曲振りをした際の塩入冬湖(Vo/Gt)は、この曲を作ったときと同じ感覚なのかもしれないが、MCの内容がスッと届いた。それが結成10年を経たFINLANDSの今を象徴しているように思えた。メンバー交代を経て、オリジナル・メンバーは塩入だけになったFINLANDSだが、核心を持ち続けた歳月はもはやバンドでもソロでもなくFINLANDSとしか言いようがない。各地のセットリストはファンからのリクエストも反映しながら、微妙に変化もあり、6都市目でファイナルの横浜に辿り着いた。

ステージ背景を目いっぱい使ったスクリーンに日付とツアー・タイトル、バンド名が投影され、今このときしかないライヴに背筋が伸びる。オープナーは近作『FLASH』から「HEAT」。照明で次第にわかったのだが、この日はメンバー全員、コート姿ではなくスーツ姿。それだけで特別感が漂う。立て続けに初期のナンバー「東名怪」がパッシヴな演奏で届けられた。今のメンバー、塩入、澤井良太(Gt)、彩(Ba)、鈴木駿介(Dr)が紡ぐ緩急を押さえたストイックなアンサンブルが、新旧の楽曲を違和感なく並置する。映像はアブストラクトなオイルアートのようなテクスチャーで、見る人によってどうにでも捉えられる可塑性を持っている。そこに、思わずイントロに声が上がった「ピース」。塩入のヴォーカルもよく通る。アッパーな序盤、背景がはっとするような深いグリーン一色に染まり、マイナー・キーの「ゴードン」へ。若くて苦い、自嘲を含んだ歌詞が少し懐かしくも感じる。これぞまさにギター・ロックといった、コード・ストロークがかき鳴らされる楽曲が続く最初のピークは、サビで多くの手が上がる「yellow boost」。様々な時期のFINLANDSの不変と今のありさまが掴めた印象だ。

塩入がオーディエンスに謝辞を述べたあとは、FINLANDSの寓話的な側面をアレンジで立体化した楽曲「カルト」へ。背景にはチャップリンを思わせる装束の男性が電気を可視化してみたり、ものの重さを測ったりする映像が流れ、”科学的に測れない”感情や行いを逆説的に映像で見せていた感じだ。今回のこの背景映像は楽曲の理解や演出としても効いていた。バンドの生身のパフォーマンスはもちろん、説明的ではない映像が新しい見応えを生んでいたからだ。続く「ラヴソング」では塩入と澤井のギター・アンサンブルが近づいたり、離れたりする男女の価値観にリンクしているようで改めて面白い。

7曲立て続けに演奏したあと、塩入が無事出産したことを報告し、ツアーで本格的に活動再開したことを知らせると大きな拍手が起こる。結婚、出産を経ても価値観に変化はなく、むしろ今の世の中が健全なものばかり求めていることへの違和感を表明。自分や人を結果的に傷つけることになるような価値観が淘汰されることはおかしいし、どんな気持ちとも一緒に生きていきたいという意思表明をした新曲「like like」を披露。いくつもの”like”が、優しいミドル・チューンに乗って確かに聴き手に浸透していくニュアンスだ。その優しさは声をリフレインするイントロの「Back to girl」に自然に繋がっていく。淡々と進む曲の中でも、今は彩が弾くボトムの太いベース・ラインがポスト・ロック的なニュアンスを生んでいて、決して素朴なだけじゃないのも聴き応えがある。映像も相まって切なすぎる感情を煽った「Hello tonight」。ショーウィンドーや遊園地の乗りものなどなど、一緒に心拍を上げるそうした諸々がメタファーとして使われているようで、人物が映らないのがむしろ想像をかき立てる。そして、寒いときほど記憶に残っているという話から、冒頭のMCに繋がり、まさに冬の透明な朝のようなひんやりとした感触の「ハイライト」が、澤井の透徹したシューゲイズ・ギターでイメージを増幅していった。

塩入はメンバー交代や自分ひとりになったFINLANDSがどこから数えて10年なのか、自分でも判然としないと言いつつ、バンド以外に10年続いたことやものはないし、もう10年だと感じるということはいい10年だったんだなと話す。そして、10年前は人を好きになるのが嫌いだったと言い、ある種、心をプロテクトしていた彼女がこの10年で好きなことやものが増えたと言うのだ。これは続けてきた人ならではの説得力だと思う。その流れで”もうやらないと思っていた曲をやります”と、「ロンリー」を演奏したのも、今回のツアーならではだろう。FINLANDSのライヴでは後半、ランダムにMCや曲についての話が登場するが、この日もそこは変わらず、新曲「キスより遠く」の前にいきなり塩入がメンバーに”昨日のワールド・カップ観た?”と振る。熱烈なサッカー・ファンはいない様子だったが、”あの状況でのPKに比べたら、ライヴ前の緊張なんてクソだよね”と塩入。オーディエンスも納得しながら笑う。だが、塩入は真剣に”挑んでるよね。私も挑みたい。こんな程度でいいと思いたくない”と話し、そこからのポップであることにむしろ挑戦を感じる「キスより遠く」が、より刺さった。続くハイトーンの歌い出しの「ダーティ」もまっすぐ、遠くまで届く。彩のイーヴルなベースが響き渡る「JAM」は、ガレージとR&Rリヴァイヴァルの旨味をさらに増していた。繰り返しになるが、今のこの4人のアンサンブルの確かさは楽曲をいつまでも新しく聴かせてくれる。

終盤はこのメンバーのプレイのタイトさが際立つ「Stranger」で加速し、アウトロのフィードバック・ノイズに煽られるように、「ウィークエンド」では塩入がステージ前方に歩み出ていく。塩入のパーソナルな思いが4人4様の演奏でひとり言に終始しない広がりを持ち得ている。出せる限りのラウドなサウンドで、エレジーめいた「バラード」をもっと強く鳴らそうとしているように見えた。

ラストはまさに目の前のひとりひとりに贈るように、「ULTRA」が、またここから始まるように丁寧に鳴らされた。愛は簡単じゃない。ものすごく複雑な心情と感覚が、塩入本人も説明できない歌詞になってアウトプットされているのだと思う。わかるとか理解とは違う、音と一体になったとき、感じられる真実めいたものをFINLANDSには求めてしまう。その表現は10年経った今も変わらない。しかし、彼女は明らかに簡単に好きになることを憎悪すらしていたところから、徐々に変化してきた。

アンコールなしの潔い約2時間ののち、青い背景にはリレコーディング・アルバムが5月にリリースされることが映し出された。今のFINLANDSを刻むこと、そして来年はもっとライヴを頻繁に行う年になること。塩入はライヴ中、ソロでの弾き語りも含めて、今ライヴがしたくてたまらないのだと明言した。アーティスト、FINLANDSの新たな季節が到来した。
コロナ禍の中、ツアー途中でファイナルの東京公演のみが延期となり、約5ヶ月待ったファンの前で開催されたライヴである。配信もされたが、塩入冬湖(Vo/Gt)が『FLASH』がひとつの区切りになったことや、例年と違いすぎる2021年を記録しておきたかったのではないだろうか。現場で観ていた者としてはギミックも何もないクリアな映像は驚きでもあり、覚悟も感じ取れた。『FLASH』収録曲を軸にライヴの人気曲も挟みながら本編のみ18曲を完走するスタンスは、映像で観ると、よりその無駄のなさが際立つ。新作からの楽曲に関するMCもこのライヴでしか聴けない/観られないもので、曲に対する愛着が深まった。平穏な日常に感謝しながらも、閃きにもまた抗えない。この時代を生きる自分の気持ちを確認できる貴重なドキュメントだ。(石角 友香)
コロナ禍の影響もあり、延期になっていた新作が約2年ぶりに到着。その間の塩入冬湖(Vo/Gt)ソロの表現も、2021年にオルタナティヴ・ギター・ロック・バンドであることの必然も、通底していることを実感する作品だ。この特異な時世を音楽に持ち込みたくないという気持ちと、偶然にせよコロナ以前から書いていた「まどか」(配信とは別Ver.で収録)から連なる、当たり前に続いていた日常や理想の唐突な断絶に対する怒りと弔いにも似た感情。逆に恒常的に彼女が抱えている”自分”を構成している要素と他者との関わりへの熱望と懐疑。音楽的には速めのハチロクの「HOW」、巨大なグルーヴを巻き起こす「ナイトハイ」、ヒップホップ・テイストもある「ランデヴー」、和なコード進行がダークな「Balk」など新たな側面も。(石角 友香)
ゲスト・ベーシストにジョーザキJAPAN(ミスタニスタ/ZOOZ)、合月 亨(Ao/オトノエ)、コシミズカヨ(ex-FINLANDS)を迎えた以外は、すべて塩入冬湖の歌とアコースティック・ギター、ピアノ、デジタル音源によって完成した宅録作品。訥々とした弾き語りがタイトルの”恋のままで”のあとに続く希望を各々の心に問い掛けるような1曲目から始まり、ピアノや無機質なビート、背景音のSEが愛らしい「timer」、エレクトロニックなポップ感に恋愛の破滅的な側面という一見ミスマッチな取り合わせがユニークな「パール」、これまでも歌ってきた「雪に咲く朝の花」を音源ならではのうっすらと聴こえるオルガンの音などで、空気感や温度感を閉じ込めているのも新鮮。パーソナルさがむしろ普遍性を生んでいる。 (石角 友香)
初のEPは昨年秋のツアー後に制作された新曲2曲に初期曲の再録、昨年10月に無料配信された楽曲を収録した4曲入り。新曲は両曲ともポップネスを持ちながら、ソングライターである塩入冬湖(Vo/Gt)の相反する孤独観が反映されており、「UTOPIA」はナチュラルなミッド・テンポのサウンドで刹那的快楽を甘く切なく歌う。「call end」はエッジーなギターと感情的なヴォーカルが作り出すスピード感と焦燥性が生々しい。「衛星」と「天涯」もそれぞれで孤独を想起させるサウンドスケープや言葉が散見されていることからも、塩入が元来持っていた、孤独の概念やひとりの世界が抽出された楽曲が揃ったと言っていいのでは。人間が持つ複雑な感情を混じり気なく落とし込んだ音、言葉、歌はほろ苦くも温かい。(沖 さやこ)
BALLOND’ORとのスプリット盤も記憶に新しいFINLANDSによる、オリジナル作品としては1年ぶりの2ndフル・アルバム。タイトルの”BI”は”ふたつの”という意味がある言葉。フロントマン/ソングライター、塩入冬湖(Vo/Gt)の音楽家としての自分と、女性としての自分という”BI”を基盤として、12曲で様々な”BI”が入り組みながらも軽やかに展開していく。ハイ・テンポでインパクトのある楽曲の威力や、ポップ・ソング、ダンス・ロック、気だるいグランジなど、多岐にわたるサウンド・アプローチのなかでもひと際存在感を放つのは、中盤とラストに控える計4曲のミディアム・ナンバー&バラード。塩入の憂いのあるヴォーカルと優しい楽器の音色は、聴き手へ物思いにふける心の余裕を与える。(沖 さやこ)
サウンドや曲調は違えど、恋愛や失恋やもどかしさ、生きていくうえでの憤懣やるかたない思いを音楽へ昇華する部分では共通する2バンド。初スプリットは、互いの途中作業をまったく知らずに進行したという。BALLOND’ORの「リトルダンサー」は、MJM(Vo/Gt)の映像的な歌詞とその内容を純度の高いヴォーカルで表現したことに加え、どこか少年性を残す内容にマッチした†NANCY†(Syn)のコーラスもいい。「WULFMAN2」は動物的な鳴き声(遠吠え?)が彼らならでは。FINLANDSは日本の女の子ならではのグランジ感と棘のような歌詞が絶妙で、BALLOND’ORのカバー「心臓に咲く薔薇」もまるで彼女たちのオリジナルと聴き紛う仕上がり。歌詞とメロディの良さをカバーで再認識するリスナーも多いはず。(石角 友香)
FINLANDSの新作は、数ヶ月に及ぶプリプロ期間で曲を練り、アルバム・タイトル”LOVE”に込められた思いをメンバー全員で共有することでよりバンドの結束力を強固にして、北海道札幌市にある芸森スタジオでの合宿で録音を行ったという力作。何より曲がいい。すでに昨年のワンマン・ライヴでも披露された「カルト」、ドラマチックでキャッチーな「フライデー」の他、メロウな「Back to girl」など、塩入冬湖(Vo/Gt)が書くメロディに寄り添いつつ主張も忘れない楽器陣の演奏も表現力豊か。特に今回、コシミズカヨのベース・プレイと粒立ちのいいサウンドは大きく作品に貢献している。「恋の前」、「サービスナンバー」といった歌詞の意味を読み取りながら聴くのも楽しい。現在の彼女たちの創作意欲が見事に結実した傑作。 (岡本 貴之)
“出れんの!?サマソニ!?”を始め、多くのフェス、イベントへの出演を経て1年ぶりにリリースする新作は彼女たちにとって初めてのフル・アルバム。Track.1「ウィークエンド」で勢いよく始まり、そのまま雪崩れ込むようにTrack.2「バラード」へと進む流れが文句なしにカッコいい。中盤はテンポの速い曲よりもミディアム・テンポの曲が多い印象で、曲数の多いフル・アルバムならではの試みもあるのか、サポート・メンバーを含めたバンドの演奏も塩入冬湖(Vo/Gt)の歌い方も様々な表現方法にトライしているように聴こえる。そこにはどう料理することもできる元来のメロディの良さへの自信を感じさせるとともに、ライヴ活動から生み出されたメンバー間の信頼関係が窺える。(岡本 貴之)
女性2人組ロック・バンドの4作目のミニ・アルバムにして2枚目の流通盤。夏であろうと冬であろうとモッズコートを着てライヴを行うというユーモアと頑固さを感じさせる活動スタイルを決してエキセントリックなだけに終わらせない、ガッツ溢れるギター・ロック。イントロからこれぞロック・バンドといったアンサンブルが楽しめるTrack.1「クレーター」、ひと際ポップなメロディとアレンジによるTrack.2「さよならプロペラ」、ハイトーンでぶっ飛ばすTrack.3「ダーティ」といった楽曲はメンバーのふたりはもとよりサポート・プレイヤーの緻密な仕事ぶりが光る。サポート・メンバーと共に4人で作った初めての作品ということもあってか、バンドとしての結束力の強さも感じさせるアルバムだ。(岡本 貴之)
“好きだよ”って伝えたりキスをしたりする、その奥にある一瞬の熱量を求めている
こちらからドアを1枚開いていくことで新しく見えてくるFINLANDS――それが一番大きなヴィジョンの変化かもしれないですね
どれだけ博学で言葉を知ってる人でも、言葉だけですべてをわかり合うことはできないんじゃないかなって
ただやりたいからやってる。ソロ作品は私にとってそういうもので、言い表せる言葉が”惚けて”だったんです
官能的なものは汚いことでは一切ないし、美しいだけじゃないけれど美しいこと
もうこのふたつは混ざらないから、両方受け入れようと思った
観てかっこ良かったから好きになった、それが真髄だと思う。音楽を好きになるときはそれだけでいい(塩入)
私にとって音楽のテーマは”興奮”で、それを言葉に言い換えると”LOVE”だったんです
私たちはギター・ロックであり歌モノであり、そこに誇りを持ってやっているというスタンスを提示できたアルバムだと思います
ダークなものに逃げずにポップスとして真正面で行けるようなアルバムを作ってみたらどう思われるんだろうな?という気持ちがありました
注目バンドが続々とデビュー。期待の女性ヴォーカル・バンドを紹介
2022.12.06 @KT Zepp Yokohama
2021.09.10 @Zepp DiverCity(TOKYO)
2019.04.10 @渋谷CLUB QUATTRO
2018.10.16 @渋谷CLUB QUATTRO
2018.06.28 @下北沢LIVEHOLIC
2017.10.29 @新代田FEVER
2016.12.07 @新代田FEVER
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Skream! 2022年12月号

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