中田裕二 男も女も惚れる、色気と哀愁を感じる歌 ソロデビュー10年を越えて辿り着いた「自分の居場所」(田中久勝) – 個人 – Yahoo!ニュース – Yahoo!ニュース

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今こんなに、男の色気を感じさせてくれるボーカリストがいるだろうか。その妖艶で艶のある味わい深い歌が魅力の中田裕二は、今の音楽シーンでは稀有なタイプのシンガー・ソングライターだと思う。椿屋四重奏のボーカル/ギターとして10年間活動し、ソロになって10数年。「自分の歌」を求めて旅を続けていたシンガーは、ある曲を書き上げ、歌えたことで「自分の居場所」を見つけた。それが「海猫」というバラードだ。この曲について、そして中田の歌全てに感じる独特の温度感、漂う情緒の源を、インタビューから明らかにしていきたい。

中田裕二は2000年に仙台でギターロックバンド椿屋四重奏を結成し、ボーカルとソングライティングを担う、まさにフロントマンとしてミュージシャン人生をスタートさせた。そして07年にメジャーデビューを果たしが、11年突然解散。ファンを驚かせた。しかし本人の中には「やり切った」という充実感しか残っていないという。

「今思うと、もしかしたらの根っからのバンドマン気質ではなかったのかもしれません。自分で全曲書いて、歌って、もちろんそういうバンドは他にもたくさんいますが、自分ではあまりセッション感がなかった気がします。バンド時代の後半、バンドとしての目標だった安全地帯のライヴを観て、玉置浩二さんへの信頼感が軸にした結束力、演奏力の高さ、コーラスもうまくて、その全てに圧倒されて、ロックバンドとしてやっていく限界を感じました。それが解散のきっかけになりました。最初の頃はTHE YELLOW MONKEYも好きで、最終的な目標は安全地帯のようなバンドでした。だから椿屋四重奏もバラードがすごく多かったし、対バンする時も、どバラードを入れたり、ロックバンドだけど歌を大切にしている姿勢をアピールしていました。そこが異質といわれていた理由かもしれません。でも自分的にはやり切った感があるので、バンドに対しての悔いは全然なく感謝しかありません。今もメンバーとは仲がいいですし、僕のレコーディングに参加してもらったりしています」。

当時から中田の声、歌を説明する時には、すでに艶、色気という言葉がよく使われていた。特に「トワ」や「マテリアル」等バラード曲でそれを強く感じさせてくれた。当然自分の声の成分を最大限に生かすすべを知っていた。

「そうなんです、バラード野郎なんです(笑)。元々バラード好きなので、ロックバンドは無理があったと思います。当時はピアノも弾けなかったし、ギターで表現するしかなかったので、そのフォーマットでロックバンドがどこまでバラードができるか、という感じでした。でもだからこそそれが個性になっていると思うし、武器になっているんだとだんだん思えるようになりました」。

バンドを解散して間もない頃、東日本大震災震災が発生し、いても立ってもいられず、一人でチャリティソング「ひかりまち」を震災直後に配信し、ソロ活動をスタートさせた。自分には「歌しかない」、そう強く感じさせられるきっかけにもなった。

「少しゆっくりしてからリスタートしようと思っていたのですが、震災が起こって、考えるよりも先に動かなきゃ、と思って何かできることはないかと考えた時、やっぱり歌うことしかできなくて。それでチャリティソングを配信したり、フリーライヴに出演しました。でもあの時ほど音楽の無力感を感じて、叩きのめされたことはありません。今思うともっと何かできたんじゃないかと思ったりもします」。

中田の作品は、バンド時代からそうだったように、例えば日本の小説に感じるエロティシズムや、古い映画に感じる古き良き日本の情緒などが、歌詞とメロディから滲み出ている。

「サウンドは洋楽志向ですが、歌詞やメロディは純日本的志向なんです。常に古い映画を観ていて、最近は成瀬巳喜男監督の『めし』という映画を観て、原節子ブームが到来しています(笑)。洋楽が好きなのですが、でも日本文化を心底愛しているので、90年代あたりまでは、日本の音楽の中には、日本独特のいい意味での湿っぽさのようなものがあったと思いますが、それが感じられなくなってしまい、僕はその急激な変化についていけませんでした。僕は日本人観のようなものが好きで、歌の中にもそれを求めてしまいます。バンドを始めたのも、日本人の情緒に訴えかけるような音楽を作りたいと思ったことがきっかけで、曲を作る時にずっと心がけていることは、人生の先輩達にも『いいね』と言ってもらえるものを、ということです」。

2021年11月に発表した11作目のオリジナルアルバム『LITTLE CHANGES』のリード曲「わが身ひとつ」はまさにその言葉通りの曲だ。宮尾登美子の小説を原作とした1987年に公開された映画『夜汽車』にインスパイアされて書き上げた作品だ。MUSIC VIDEOでは昭和初期を舞台に、男女のやるせない心情が表現されている。

「『わが身ひとつ』は、純文学meetsジャズという感じで、古いもの、古い時代のものが好きではあるのですが、それだけをモチーフにして作品にしても、それはただの趣味になってしまうので、その古さを武器に、ちゃんと現代的に、リアリティがあるものを作りたいと思っています。ルーツと向き合いリスペクトを表しつつ、それを昇華させ自分の音楽にして、それを次の世代に伝えていくのが自分の役割だと思っています」。

2020年に発売されたアルバム『DOUBLE STANDARD』のリードトラック「海猫」は、特に人気が高い曲だ。この曲は中田自身が追い求めていた、奏でるべき音楽、歌うべき歌だ。

「ミュージシャンとしても人間的にも自信を失っていた時期にできた曲です。ソロになって色々なアプローチで自由に曲を作り歌ってきて、でもやればやるほどどれが自分のオリジナリティってなんだろうと思ってしまって。時代にも乗れていないというか、焦燥感と葛藤の中で途方に暮れていました。そんな気持ちで、普段からよく行く隅田川沿いを夜、散歩していたら、ビルの看板が川面にキラキラ輝いている景色が目に入って、それを眺めていたら、揺れる光が自分の人生のように感じました。その時、海猫が鳴きながらたくさん飛んでいて、その景色を見た瞬間にグッときました。当時僕は38歳で、こういう景色を見て、いいなって思えるまで成長できているんだと思えたし、30代後半の人は、みなさん仕事では中間管理職だし、プライベートでも色々とある時期だと思うし、自分はそういう気持ちを歌えるし、リアリティがあると思いました。なんともいえない生きづらい感じを抱えている人は多いと思いました。この思いを歌にすることが自分の使命なのでは、と思いました。“しみじみ感”ってなんかいいなって思って、それを描こうと思いました。今、しみじみ系の歌ってあんまりないじゃないですか」。

「海猫」を書いてから、自分の中で何かが「開け」、曲が次から次へと出てきた。「自分の居場所が見つかった」感じがしたと語ってくれた。それは「ロックバンドあがりという呪縛から解き放たれた」瞬間だった。ソロになってロックバンドではできないものを作る、作らなければいけないという重いものを背負い続けていた。それが「海猫」を書いた時に、違う境地に行けたという。

哀愁を帯びたギターの音色が印象的なシンプルなサウンド、メロウなメロディ、ずっと心の中を覆っていた感情が言葉になったような等身大の歌詞、そして艶やかで薫り立つようなボーカルが心に突き刺さり、感動が胸の奥深くまで広がっていく。聴き手は歌詞の行間に身を置き、たゆたうようにそこに浮かぶ、自身を投影した感情を掬いあげ、感動に変える。そして情緒を運んできてくれる。

この曲を書き上げた瞬間を中田は忘れないと語ってくれたが、スタッフもこの曲を最初に聴いた瞬間の感動が忘れられないという。

「それまでの音楽は、ボーカルはもちろん、ギターもベースもドラムも、全部が歌っているような感じでした。中田の声に全てが含まれているのに、そこに色々な楽器が鳴りすぎていると、歌の良さが削ぎ落されてしまっていたように感じました、この曲で引き算の美学を学び、中田の歌だけで全てが成立することが、みなさんにも伝わったと思います」(マネージャー氏)
現在中田は、オリジナル/カヴァーを織り交ぜたセットリストをその場で組み上げていく、単独での弾き語りツアー<謡うロマン街道>と、最新作『LITTLE CHANGES』の収録曲をメインに、会場ごとに異なるメンバーとの組み合わせの妙、変幻自在なスタイルで楽しませる<LITTLE CHANGES ツアー>、この2つのツアーを並行して行っている。音源でも十分感じることができるがライヴで中田の歌に触れると、その存在が現在の音楽シーンの中で唯一無二であることが、深い説得力と共に伝わってくるはずだ。

中田裕二 オフィシャルサイト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。
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