フィルフリーク | Skream! ライヴ・レポート 邦楽ロック・洋楽 … – Skream!

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LIVE REPORT
Japanese
Skream! マガジン 2023年01月号掲載
2022.12.02 @Spotify O-WEST
Writer : 稲垣 遥 Photographer:スエヨシリョウタ
フィルフリークがミニ・アルバム『STORY STORE』を引っ提げて開催した東名阪リリース・ツアー”MAiN STORY”。その2本目、名古屋公演の数日前に飛び込んできたのはセンセーショナルな知らせだった。なんとギタリスト、小竹 巧が事故に巻き込まれ、全治約半年という手術が必要なほどの怪我を負ったという。命が無事だったことには胸をなでおろす思いだったが、それでもやはりツアーはどうなってしまうのだろう、と心配してしまった。だが彼らは早々に、名古屋公演は小竹抜きの編成、そして最後の東京公演はサポート・ギタリストを入れた編成で走り切ると決断、発表したのだった。
それでも見事Spotify O-WEST公演ソールド・アウトを果たし迎えた当日。

満員の会場のステージにまず表れたのはギタリストの小竹だった。三角巾で左腕を吊りながら、でも笑顔でもう片方の手を振りながら出てきた小竹。”今日手術を終えて退院しました!”と元気良く報告すると温かい拍手が湧く。そして彼から、この日小竹の代わりにサポート・ギタリストとして登場する3人を紹介。マーベルマベリックのれーや(Gt/Vo)、HIGH BONE MUSCLEの鈴木啓(Vo/Gt)、そして昨年7月に療養のため活動休止、今年5月にバンドを脱退したフィルフリークの元ギタリスト、三上大鳳だ。小竹は悔しさも口にしながら、”次は弾くので!”と終始明るく振る舞い会場を温めてバンドの入場に繋いだ。

まずはれーやとサポート・ドラムのKei(Navy Sugar)と共に登場したフィルフリーク。ライヴは「アオに浮かぶ」からスタートした。男女ツイン・ヴォーカルによる彼らのポップ・チューンが躍動する。続く「ブルーライドレター」では広瀬とうき(Vo/Gt)が冒頭から激しく動き、勢い余って転倒しかけて曲をやり直す場面も。ゆっこ(Key/Vo)がその様子を見て爆笑していたが、こちらがまだ捨てきれずにいた不安すべてをぶっ飛ばす、気合溢れる姿を序盤から見せつけてくれて微笑んでしまった。”みなさん盛り上がっていけますかー!?”とゆっこが叫んでからの「深海ブランコ」では、広瀬もゆっこもハンドマイクで左右のお立ち台に上ってオーディエンスと一緒にタオルを振り回し、歌詞通り”マックスハイテンションで”盛り上げる。そこから、広瀬が”最近恋してる?”と各メンバーに聞いて回り、その唐突さに笑いも少し起きながら「KOIがハジマル」へ。ツカダユウキのベースが効いた洒脱でグルーヴィなピアノ・ポップに乗る、広瀬とゆっこによるちょっぴりコミカルな男女の掛け合いのリリックが楽しい。最新作『STORY STORE』からの楽曲メインで構成された1ブロック目だったが、これだけライヴ映えするナンバーが揃っていたのだなと今作の作品としての強さを改めて実感した。

ギタリストが鈴木にバトンタッチした1発目「朝日を待つ」では音圧を上げ、エモーショナルでロックなフィルフリークを前面に打ち出してガラリと空気を変えた。さらに”彼氏のいる人を好きになった”という広瀬の片思いからできた「Lala」、そして「スレチガイ」と、リアルな恋の話がヴィヴィッドに描き出される2曲を連続披露。”戦ってるあなたへ”と投下された「NAMI」では、壮大さも湛えたサウンドに合わせ”今日も愛を歌う”と広瀬の想いが歌い上げられると同時に、鈴木が前に出てギター・ソロをかき鳴らし、多くの拳が上がった。

サポート・ギターのバトンが元メンバーである三上に渡り、一段と骨太になったドラムから「道端日和」へ。いなたさのある轟音が吹き荒れるインタールードと音数の少ないメロ部分のメリハリがクールな重心低めのミドル・テンポが、またここまでとは違うフィルフリークを演出する。キーボード・ソロから全員で楽器を思い切り鳴らし最後のサビへと向かうと、その迫力に大きな拍手が起きた。”初めてO-WESTに立ったのは7年前。お客さんふたりでした。そのとき絶対ここに戻ってくると決めた。あなたとの約束の歌”(広瀬)と「ひかりをみて」へ。お立ち台で渾身のギター・ソロをかき鳴らして手を上げる三上。ポーカー・フェイスながらも、ともに歌を口ずさみながらプレイするKei。こみ上げる想いを噛み締めるように演奏するツカダ。はじける笑顔で感情を表出するゆっこ。フロアを見渡し懸命に観客に歌を届ける広瀬。そして袖で彼らをじっと見つめる小竹の姿も目に入る。今このライヴに込めた気持ちが滲む全員の表情に見入ってしまった。明滅するストロボから”いろいろあるけど、死ななきゃいいと思う!”と広瀬が叫んだ「生きてる」での気迫も凄まじい。

“たくさんの音楽に出会うなかで、「頑張れば夢は叶う」、「努力すれば報われる」って言葉を何度も聞いた。だけどそんなことないと思ってた。だって頑張れば夢は叶うなら音楽をやめていった先輩はいなかったはずだし、努力すれば報われるなら小竹も今日のライヴに出れてたと思う。だけど、俺がそう歌うのをやめたら、やめていった先輩たちに顔向けできない。――今日、できない可能性のほうが大きかった。中止、延期の話もあった。お客さんふたりからソールド・アウトまで7年もかかった。俺は天才じゃないと思う。”ROAD TO EX(2019)”で優勝したけどコロナで全部0になった。だけどこの場所に戻ってこれた。だから、努力は、それぞれ形は違えど報われると思ってます!”。冗長なMCなしでやってきていた広瀬がここぞとばかりにすごい熱量でそう語り、”最後の最後に報われる”と「サイドストーリー」を絶唱。その言葉を体現する満員のO-WESTでの渾身のパフォーマンスに、あの場にいてグッとこない者などいなかっただろう。曲中でも”俺、バンドやってて良かった!”と叫んだ広瀬。最後は地声でフロアに感謝を伝えて去っていった。

アンコールも沸いたが、”武道館までアンコールはやらない”と広瀬は笑いながら言う。また、”来年EX THEATER(ROPPONGI)に出たい”とも口にしていた。そのときは小竹もステージに立ち今日のぶんまでギターをかき鳴らしてくれるだろう。最後の最後に報われる。それだけは信じてみたいと思わせてくれる一夜だった。
[Setlist] 1. アオに浮かぶ
2. ブルーライドレター
3. eisei
4. 深海ブランコ
5. KOIがハジマル
6. 朝日を待つ
7. Lala
8. スレチガイ
9. ロクドロクブ
10. NAMI
11. 道端日和
12. ひかりをみて
13. ホワイトストロベリー
14. 生きてる
15. サイドストーリー


ピアノとヴォーカルで始まり、すぐさま躍動感溢れるバンド・サウンドへとなだれ込む「ロクドロクブ」。この曲ができあがった瞬間このミニ・アルバムは産声を上げた。”4つの恋のはなし。”から始まったフィルフリークの8つの話は、どれもリアルで、凄まじい生命力を持っている。バンドの存在を確立させたという「スレチガイ」では、広瀬とうきとゆっこの交差する歌声が不安定な景色を見事に表し、胸を締めつける。「KOIがハジマル」ではポップに恋のドキドキを描き、最後は「NAMI」。ここに描かれるのは広瀬自身の話であり、そしてそれはバンドの話へと繋がっていく。ドラマチックで人間臭くて、不器用だけど何かをずっと信じていて、そんな正直すぎる彼らの8つのストーリーは、今現在の彼らのようにどれもが力強く輝いている。(藤坂 綾)
“二面性”がテーマの2ndミニ・アルバム。二声の甘酸っぱさが際立つ「真夜中の交差点」、ポップで爽快な「Be Kind」と頭2曲はこのバンドらしさ全開だ。一方、広瀬とうき(Vo/Gt)が憧れの人に宛てた「1970」の生々しい筆致、オルタナ色の強い「道端日和」で”裏”を見せつつ、広瀬とゆっこ(Vo/Pf)の共作曲「ワンルームヒストリー」、転調を盛り込んだ「キャンディー」と、新しい側面を印象づけることも忘れない。聴き進めるほど深層へ踏み入れるような感覚になる。人の心の混沌を認める7曲を締めくくるのは、”朝が来て/夜を待つ/また朝が来て/夜を待つ”(「朝日を待つ」)のフレーズ。”そういうもんだから大丈夫”と言ってくれる優しさに心が軽くなる。(蜂須賀 ちなみ)
ショート・チューン「強くなれる」から、シンガロングが目に浮かぶ「サイドストーリー」、広瀬とうきとゆっこのハーモニーが絶妙な「ホワイトストロベリー」と、序盤から聴きごたえたっぷり。そして、沸点が訪れるのが「eisei」。ドラマチックな展開とエモーショナルな歌声、宇宙まで発想を飛ばすロマンチックな感性と”あなたが今泣いていても/青い空は綺麗だ/だから夢を魅るんだ”という絶対的な励ましにいざなう歌詞。すべてが一体となって、フィルフリークの魅力を伝える。さらに、題材の妙が光る「ラッキーカラー」、シンプルな「青い風船」から、ゆっこの歌が堪能できる「マジシャン」という後半の流れも心地いい。完成度の高いポップスに人間臭さを内包した、多くの人にとって必要なバンドになることを予感させる1枚だ。(高橋 美穂)
“4つの恋のはなし。”から始まったフィルフリークの8つの話――あなたの好きな話を、あなただけのプレイリストに入れてください
日本の音楽で一番美しいのは、ネガティヴな人が書くポップスだと信じている
聴いてくれる人の日常に寄り添う音楽を鳴らしたい
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