優里が年間総合1位を獲得!Billboard JAPANチャートから振り返る2021年の音楽シーン – 音楽ナタリー

一気にスターダムを駆け上がったニューカマーから、さらなる躍進を遂げたポップスターまで
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Billboard JAPAN総合ソングチャート「JAPAN HOT 100 of the Year 2021」が発表され、優里の「ドライフラワー」が1位を獲得した。そのほか、トップ10にはAdoBTSYOASOBIなど、今年の音楽シーンを代表する面々の楽曲が並んだ。音楽ナタリーでは、著書「ヒットの崩壊」でBillboard JAPANに取材したことのある音楽ジャーナリストの柴那典氏、音楽専業のデジタルプロモーション / マーケティング会社arne代表の松島功氏、ブログ「イマオト」で毎日Billboardチャートなどについて発信している音楽チャートアナライザーのKei氏の3名による座談会を実施。CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、ラジオ再生、ルックアップ(PCへのCD読み取り数)、ツイート、動画再生、カラオケという8種類のデータを複合したBillboardチャートを見ながら、今年の音楽シーンを振り返ってもらった。
取材・/ 丸澤嘉明
──皆さん普段Billboard以外にどんな音楽チャートをチェックされていますか?
柴那典 僕はSpotifyとApple Musicの各国のチャートをよく見ています。
松島功 私が見ているのは毎週日曜日に更新されるYouTubeの楽曲ランキングとYouTubeのミュージック ビデオ ランキングです。あとはBillboardさんが発表しているTikTok週間楽曲ランキングも見てますね。
Kei 毎日チェックしているのがSpotifyの日本のデイリーで、あとはアメリカのBillboardとグローバルチャートも見ています。つい最近アメリカのBillboardがTwitterのトレンドのチャートを始めたのでそれも見るようにしました。
──いろいろなチャートがある中で皆さんBillboardのチャートをヒットの指標として重要視されていると思うのですが、Billboardチャートの信頼できる理由はどういうところにありますか?
 僕は著書「ヒットの崩壊」でBillboard JAPANのチャートディレクター・礒崎誠二さんに取材させていただいたことがあるんですけど、そのときに「共感性の高いチャートを作ることを目指している」とおっしゃっていた。共感性が高いというのは、「多くの人が上位の顔ぶれを見て『今話題になっている、流行っているのはこの曲なんだ』と納得できるようなチャートだ」と。中の人がそうやって発信していたことがまずは入り口ですね。そもそも日本ではオリコンが長らくヒットチャートとしての役割を担ってきましたけど、2010年頃からそれがAKB48に埋め尽くされたときに「これってどうなんだ?」と当然思うわけです。そしたらオリコンチャートのオルタナティブとしてBillboardが出てきて、僕の肌感覚では2015年頃から支持されるようになってきたのかなと思います。
松島 柴さんはいまだにオリコンランキングはご覧になります?
 あまり見なくなりましたね。
──松島さんはBillboardチャートについてどうお考えですか?
松島 Billboardチャートもまだまだ変えなきゃいけない部分はあるとは思うんですけど、Billboardチャートの上位を目指すことがファン作りにもつながると思っていて。今までアーティストはオリコンの1位を目指していましたが、それって要はたくさんCDを売ろうということですよね。でもBillboardで1位を取るにはいろんな指標を満たさないといけない。CDを売るだけではなくてストリーミング配信にも力を入れなきゃいけないし、MVもしっかり作らないといけないし、Twitter指標もあるのでファンとのコミュニケーションも取らないといけない。それらをクリアするためにやることがファン作りにもつながるし、売上にもつながるところがすごくいいなと思うんですよね。
Kei 私がBillboardのチャートを見るようになったのは2017年頃ですけど、そのあとにフィジカルセールスの指標に係数処理が行われるようになったんですね。これまで100万枚売れたら100万枚で換算されていたものを、ある一定の枚数以上は係数を入れるという話でして。それを行ったことでCDを出していない作品も1位になることが増えて、結果的にBillboardが社会的にヒットの模範になってきたと感じています。今ではテレビの音楽番組でもBillboardチャートを使っていますよね。TBS系の「CDTVライブ!ライブ!」もBillboardに近い複合指標に基づくチャートを出していますし、そういった意味でもBillboardチャートが世の中に浸透してきたと思います。
松島 Billboardを取り上げるメディアがすごく増えましたよね。だからレーベルも必然的に目指さないといけない。
Kei 柴さんが新たなヒットの基準として、「ストリーミング1億回再生」とおっしゃっていますけど、それもすごく大きいと感じています。
松島 各ストリーミングの合算での再生回数を発表しているところがBillboardしかないですからね。そういう意味合いでも影響力は大きいですね。
──Billboardは常に指標の見直しを行っていて、昨年の12月にUGC(※User Generated Contents。一般ユーザーによって作られたコンテンツ)をカウントしないという変更があり、UGCのみの再生回数を集計したTop User Generated Songsチャートがスタートしました。今年の3、6、9月にもウエイトの比率などを変えていますよね。常にアップデートしている印象があります。
Kei ここまで頻繁に変えたのは今年初めてだと思うんですけど、時代の変化を意識し、対応していることを実感しますね。オリコンもCD、ダウンロード、ストリーミング再生の合算のランキングを2018年末に始めましたけど、確かウエイトの変更は行われてないはずで。CDの売り上げが最優先になっていることは明白で、Billboardチャートはそれとは異なる動きをしているので、それもやはり信頼できるところかなと思います。
上段左からKei、松島功、下段は柴那典。
──それではここから「JAPAN HOT 100 of the Year 2021」のトップ10を見ながら今年の音楽シーンを振り返っていきたいと思います。
 Adoの「うっせぇわ」に関しては去年10月末にリリースされた直後からYouTubeやTikTokで目覚ましい跳ね方をしていて、それがストリーミングサービスにも波及して大きな波が来ると思って、昨年末の段階から「2021年の台風の目になる」とがんばって発信していた記憶があり、手前味噌ですがこれから流行る兆候をつかめた実感があります。もちろん予想以上ではありましたが、それまでまったく無名だった人が、曲名を聴けば老若男女に伝わるような流行歌が生まれたという意味では今年を象徴する曲だと思うし、Billboardを見てると予兆みたいなものがチャートに現れていた気がします。
Ado
Kei 今年の1月20日公開分でBillboardでトップ10入りしたんですよね。
松島 「うっせぇわ」って、BillboardがUGCをカウントしないことになってからリリースされている曲なので、UGC合算だったらもっと上に行けたはずなんですよね。今年に入ってからのYouTubeのMVの再生回数が約1億4300万回なんですけど、それとは別にYouTubeが発表しているJapan Top songsという数字があって、これは約2億5400万回なんですよ。この約1億回の差っていうのは、“歌ってみた”のようにレーベルがマネタイズしているUGCとYouTube Musicの再生回数なんですね。MVが複数ある形でもないので、ほとんどUGCなんですよ。なのでUGCもBillboardチャートのカウントに入っていたらもっとすごいことになっていたはずで、逆境の中でも年間上位に入ったっていうのは面白いストーリーかなと思います。
──ここまでヒットした要因はなんだと思いますか?
 明らかに言えるのはズバ抜けて歌がうまい。本当にそれがなによりで、うまいっていうのもカラオケ的な音程が優れているとかではなくて、がなる強さ、ウィスパーボイスの透明感みたいなもののスイッチをどんどん切り替えられる歌い手としての表現力とキャラクターがズバ抜けているところが何より大きい。あとはコロナ禍の影響でライブシーンからブレイクするアーティストが少なくなっている一方で、YouTubeやTikTokで知名度を上げる人が増えていて、そういうメディアプラットフォームの変化もあると思います。
──去年ブレイクしたYOASOBIのAyaseさんと同じく、この曲を書き下ろしたsyudouさんもボカロPなんですよね。
 ボカロに関して、僕は今が一番カルチャーとして盛り上がっているんじゃないかと思っています。裾野がめちゃくちゃ広がっている。
松島 10月に行われた「The VOCALOID Collection~2021 Autumn~」の盛り上がりもすごかったですもんね(参照:「The VOCALOID Collection ~2021 Autumn~」開催記念特集 Ado×伊根|ボカロ界隈の“文化祭”を通じて発見する新たな才能)。
 そうですね。J-POPの領域では無名ながら、Kanariaさんのようにスターダムを駆け上がる10代のボカロPが登場してきている。そういうところからも、「うっせぇわ」やYOASOBIの楽曲のようなヒット曲を生んだだけではない裾野の広がりをすごく感じました。
Kei Kanariaさんの「KING」はBillboardのUGCチャートで毎週トップ3に入ってましたからね。でもHot100になると今年度は一度も入ってこないんですよ。なのでUGCを外したのは個人的にはマイナスかなと思っていて。もし動画再生指標のウエイトが上昇するようになればボカロPの作品群がさらに脚光を浴びやすくなる気がします。
松島 多少なりともカウントしてもいいですよね。それにしてもこうしてランキングを見ると去年の曲ばっかりですね。
Kei Billboardチャートの性質というか、ロングヒットしやすい傾向にあるぶん、上半期とかその前からヒットしている曲が年間で上位に来やすいんですよね。チャートの仕組みを考えると、下半期チャートもちゃんと発表することが必要だと思います。
松島 確かに上半期は発表しますもんね。下半期は発表してないんでしたっけ?
Kei BillboardがやっているPodcastで話すことはありますけど、大々的にはやってないですね。下半期の獲得ポイント上位で言うと例えば藤井風さんの「きらり」(年間19位)、Adoさんの「踊」(年間18位)、BTSの「Permission to Dance」(年間15位)、Official髭男dismの「Cry Baby」(年間13位)などが上位にきています。あと米津玄師さんの「Pale Blue」(年間30位)も。「Pale Blue」は10万ポイントを超えているんですけど、CDのウエイトが大きいですね。
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