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配信
ピアニストの角野隼斗さん＝園田寛志郎撮影
「クラシックは堅苦しいなんて言わせない」――。タワーレコード渋谷店（東京）の売り場に掲げられた手書きポップに、新時代到来を祝うかのような言葉が躍る。角野隼斗の最新ＣＤ「ショパン：ピアノ協奏曲第１番 ホ短調 作品１１」。Ｊポップ売り場を含む３フロアで大展開をする同店には、従来のクラシックの客層とは異なる若い女性の姿も目立つ。 【写真】ピアノを弾く８歳の角野隼斗さん
ＣＤには昨年９月、東欧の名門、ポーランド国立放送交響楽団と共演したコンサートを収録。鍵盤（けんばん）が宙を舞うがごとく躍動する第３楽章や、これ以上ない微細なタッチで叙情味をたたえる第２楽章が角野の真骨頂だ。「好きなのは、やっぱり『２』ですかね。極限までシンプルなショパンの引き算の美学。日本的な美に通じるところがある」。角野はほほ笑む。
多様なジャンルを自在に行き来し、作編曲のセンスも際立つ万能性。加えて、東京大大学院で人工知能（ＡＩ）を研究した経歴、ショパンをほうふつとさせる容貌（ようぼう）など話題に事欠かないピアノの新星は２０２２年、縦横無尽の活躍を見せた。
「忙しかったですね。家にいない時も多いから、演奏会場では必ず練習室を取ってもらって、次やその次のコンサートの準備をする。その繰り返しでした」
２月のツアー最終公演は、アップライトピアノによる「ポスト・クラシカル」という新境地を示し、５０００人の聴衆を優しい響きで包んだ。「ＢＢＣ Ｐｒｏｍｓ ＪＡＰＡＮ」ではゲーム音楽を軸とした独自のプログラムを組み、「サントリー１万人の第九」では圧巻のカデンツァ（即興）を披露した。ゆず、ｍｉｌｅｔらポップス歌手とも共演し、「フジロック・フェスティバル」にも登場。さらにユーチューバー「Ｃａｔｅｅｎ（かてぃん）」としては、ピアノや鍵盤ハーモニカを駆使した遊び心いっぱいの動画で人気を集め、チャンネル登録者数は１１０万人を突破した。
ジャンルの境目を軽やかに解きほぐす柔軟さは、歩んできた環境にあるのだろう。２００４年５月、本紙は８歳の“隼斗くん”を「スーパーキッズ」として紹介。前年に小学６年生も出場する全国大会で上位入賞したピアノの腕前はもちろん、即興演奏も得意で、シーケンサー（楽曲データを記録・再生できる装置）での作曲を覚えたという早熟ぶりも伝えている。
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