[寄稿]ウクライナの少女とブラックピンク : 社説・コラム : hankyoreh japan – The Hankyoreh japan

 先月14日午前10時、私はルーマニアとウクライナの国境地帯に立っていた。空は青く塗られたキャンバスのようで、広大な野原のはるか遠くに身を寄せ合っている大小の木々の姿は、絵に描いたような平和な田舎の美しい風景だった。しかし目の前には、荷物を引きながらウクライナからやって来た避難民の行列が連なっていた。平和で美しい背景とは異なり、彼らの顔には緊張感、疲労、絶望が満ちていた。
 娘と一緒に疲れた様子で荷物をかろうじて引っ張ってくるある女性と言葉を交わした。彼女の母親は戦争で命を失い、透析を受けている夫は、もはや病院で治療が受けられなくなり、娘と妻が避難の途につくのを健康が悪化した状態で見送ったという。家族を全員送り出してひとり家に残った夫は、ペットの犬と共にこのすべての状況が終わることを待つしかないという気の毒な状況だった。闘病中の夫を置いて家を離れざるをえなかったことを語る彼女の目からは、涙が流れていた。
 どんな言葉によっても彼女と娘を慰める自信がなかった。その痛ましい心情は想像すらできない。代わりに、せめて少しのあいだは幸せだった時を思い出してもらいたいという思いから、犬の写真を見せてほしいと頼んだ。彼女はスマートフォンを取り出し、犬と共にいて幸せだった時の家族の動画を見せてくれ、その瞬間彼女と娘の顔に笑みが広がった。幸いにも、幸せそうな動画の中の家族のことを語ることで、心の平穏を取り戻しつつあるようだった。
 私は戦争を経験したことは一度もないが、朝鮮戦争でわけも分からないまま幼い時に避難した私の両親の心情を少し理解することができた。しかし、70年前ではなく今この瞬間にも、恐怖と悲しみの中で避難する人々がいる。
 国境から遠くないところにある、ワールド・ビジョンが支援する難民センターで出会ったイザベラも、母親と共に国境を越えてやって来た。7歳の幼いイザベラは韓国という国を知っていた。Kポップのガールズグループ「BLACKPINK(ブラックピンク)」のためだった。ブラックピンクの動画を見せると、イザベラは肩を揺らしながら一緒に歌って喜び、そばでその様子を見守っていた母親も明るく笑った。音楽が国境と人種を越えて平安を与えている様子を目撃した瞬間だった。イザベラは大切にとっておいたリンゴジュースを、ブラックピンクに渡してほしいと言って私に手渡した。私は必ず渡すと約束した。最後に今いちばん必要なものは何かと尋ねると、イザベラは「家に帰ること」と答えた。
 2月に戦争が始まって以降、750万人いるウクライナの子どもの3分の2以上が、イザベラのように家を離れなければならなかった。難民の90%が女性、児童、青少年であり、うち40%は14歳未満と推定される。理由も分からぬまま、愛する家族、友人たちと別れ、学校にも行けず、平凡な日常を奪われなければならなかった。この紛争がどれほど続くのか、いつ家に帰れるのかは分からない。しかし、私たちはこの残酷で悲劇的な紛争が子どもたちにどのような影響を及ぼすのか、多くの例を通じてよく知っている。紛争による心の傷を癒やすこと、教育を受け続けられるよう支援することは、生活必需品を渡すことと同じくらい重要なことであろう。
 イザベラが渡してくれたリンゴジュースを大切に持って韓国に戻りつつ、イザベラも早く自分の家に帰ってブラックピンクの歌を歌いながら友達と駆け回って遊ぶ、そんな日常を取り戻すことを私は願った。そしてもうひとつ約束をした。イザベラをはじめとするすべての子どもが平凡な日常を回復するその日まで、必ず彼らと共に歩むということを。
チョ・ミョンファン|韓国ワールド・ビジョン会長 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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