阿久先生に見守られ 歌手・増田恵子(静岡市出身) ソロ40周年記念盤、ピンク・レディー時代皮切りに新旧37の代表曲収録|あなたの静岡新聞 – あなたの静岡新聞

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2022年8月26日(金)

文化生活部 橋爪充

 歌手増田惠子(静岡市出身)がソロデビュー40周年を記念したアルバム「そして、ここから…」を発表した。ピンク・レディー時代のソロ曲を皮切りに、作詞家阿久悠(1937~2007年)の未発表作品を歌った2曲など、新旧の代表曲を詰め込んだ。

 静岡市内の中学校で出会ったミー(現・未唯mie)とともに上京し、ピンク・レディーとして世に出たのが1976年。解散後の81年、中島みゆき作詞作曲の「すずめ」でソロデビューした。

 全37曲を収録した2枚組CDは、2021年から続く「40周年プロジェクト」の最大のコンテンツだ。新録音の5曲、全てのソロシングル表題曲に加え、ピンク・レディー時代のライブ音源から洋楽のカバーなど8曲、昨年の配信ライブ音源13曲を収めた。

 「私は新曲だけでも十分だったんです。でも、プロデューサーの西沢雅巳さんたちがいろいろ案を出してくださって、これだけ芳醇[ほうじゅん]なアルバムが出来上がった。ピンク・レディーが所属していたビクターから、解散後初めて出せるのも有り難く思っています」

 聴きどころの一つはピンク・レディーの数々のヒット曲を生んだ阿久悠作詞、都倉俊一作曲による新曲「向日葵[ひまわり]はうつむかない」。ミドルテンポのやわらかい曲調が胸を打つ。

 「阿久先生の未発表詞の中から『向日葵-』を歌うことになり、西沢さんに作曲者の希望を聞かれたんです。迷わず『都倉先生に書いてもらいたい』って言いました」

 ピンク・レディー時代の1977年の初ソロ作「インスピレーション」も同じ阿久・都倉コンビ。増田の胸には、都倉による録音時の歌唱指導の言葉が今も響く。

 「1回歌ったら平山みきさんを例に『もっとはすっぱに。生意気そうに』と言われましたね。でも今回は『この作品はソロとして40年間頑張ってきたご褒美。自分が歌いたいように歌いなさい』という言葉をいただいて。感慨がありました」

 育ての親の一人とも言える阿久に対する敬愛は、死去して15年後の今も変わらない。

 「ご存命の時は眼光が鋭くて言葉が少なく、いい意味で怖い存在でした。先生の前に立つと、素人の頃に戻ってしまって。でも優しい方だった。自分が初心に戻れる“場所”でした」

 命日8月1日の墓参を欠かさない。今回の作品発表もいち早く報告した。

 「今年も西沢さんと行きました。彼はいつもより1・5倍ぐらい長く手を合わせていたかな。『うれしい報告がいっぱいあるんです』って。私もCDを持って行き、お見せしました。先生には今も、近くで見守っていただいている気がするんですよね」

 増田惠子のソロデビュー40周年記念盤「そして、ここから…」には、1970年代後半のピンク・レディーのライブで披露したソロ歌唱の音源も多数収録されている。一聴して驚くのは、洋楽カバーの多さだ。

 「『朝日のあたる家』『ホテル・カリフォルニア』『カントリー・ロード』―。当時のプロデューサーの相馬(一比古)さんが選曲して『ミーにはこの曲、ケイにはこの曲』って決めていました。私の声質とか、パッションとか、いろいろ考えて選んでくださっていたんです」

 1970年代の米国のボーカルグループ「モーメント・オブ・トゥルース」の「チェインド・トゥ・ユア・ラブ」も取り上げている。増田のしゃがれ声のシャウトが聴ける異色曲だ。

 「自分で言うのもおかしいけれど、かっこよくて。これを超える歌は歌えないなと思います。(ピンク・レディー全盛の)当時の自分の壮絶な日々、時間を生きていたからこそ歌えた歌。好きなことを職業にした若かりし私が、自分の全てをかけて歌っている。生き方が上手じゃなくて、いろんなところにぶつかりながらなんとか日々を送っていた私だからこそ、あんなふうに歌えていたんでしょう」

 デビュー前から洋楽には親しんでいたという。

 「高校2~3年時はヤマハに所属して、毎週土日曜に浜松までレッスンに通っていた。その時からシュープリームスが大好きでした。ボーカルスクールの山崎朗先生はトム・ジョーンズが好きで。普通、ボーカルスクールと言えばピアノで発声練習をするものだけれど、先生はアコースティックギターを使っていました。スタッカートのある曲、グルーブ感のある曲を練習するから、それはそれは楽しくて。私たちのリズム感って、アコギによる山崎先生の練習で培ったものなんです」

 歌手を志したのは幼稚園時代にさかのぼる。

「3歳の頃から歌番組の記憶があります。いしだあゆみさん、小川知子さん、佐良直美さん、都はるみさん、畠山みどりさん―。歌謡曲が大好きでした。幼稚園生の音楽コンクールに出て『村の鍛冶屋』などを歌って賞をいただいたときに、担任の先生が『けいこちゃんってほんとうに歌がうまいわね』って褒めてくださって。その言葉で私は歌手になるって決めたんです」

 9月2日、ビルボードライブ横浜(横浜市中区)でソロデビュー40周年を記念したコンサートを予定する。
 「昨年配信ライブをやりました。大きな挑戦だったけれど、自分で自分のテンションを上げるのがとても難しかった。私の歌を受け取ってくれる方が目の前にいるから歌い続けられるんだとつくづく思いました。生で歌の心、私の心を届ける機会がある幸福を、あらためて感じています」
 配信ライブと同じようにギター、チェロ、ピアノを基軸としたアコースティックセットで届ける。「ピンク・レディーの曲も含めて、楽曲に新しい命を吹き込みます。お客さまを楽しませたい。幸福感に包まれた会場になると思います」
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