洋楽のヒット曲をオマージュしてJ-POP・アイドルソングにしてしまう文化について – オトニッチ

POP

 

 
TEAM SHACHIの新曲『JIBUNGOTO』を聴いて「なるほどな」と思った。洋楽のヒット曲にJ-POPとアイドルの要素をミックスさせるとこうなるのかと思った。
 
おそらくグラミーで年間最優秀楽曲賞と年間最優秀レコード賞を受賞し、世界的な大ヒット曲であるBillie Eilish『bad guy』を参考にして作られているのだろう。
 
bad guy
 
『bad guy』を知っている人ならば、曲が始まった瞬間に似ていると思うはずだ。バックトラックの低音の使い方や音数が少ない編曲。そして途中でテンポが変わる曲展開。などなど。
 
決してパクリと言いたいわけではない。オマージュやパロディのつもりでやっているだろうし、似ている部分はあるがフレーズをそのまま引用しているわけでもない。
 
 
オマージュしつつも『bad guy』を力技でJ-POPに落とし込んでいる。新しい音楽へと変化させようとしているのだ。
 
そのため『JIBUNGOTO』はAメロ→Bメロ→サビという構成でメロディアスでサビになると一気に盛り上がる展開になっている。これはJ-POPの王道パターンである。
 
 
これを受け入れられるかどうかは、人それぞれの感覚や良心によって変わってくるとは思う。オリジナリティがないと思う人もいるだろうし、これなら『bad guy』を聴くという人もいるだろう。
 
個人的には海外のヒット曲をオマージュすることや「日本のポップスとしての要素」を組み合わせる手法は、なかなかに面白いと思っているので嫌いではない。
 
 
J-POPといえばAメロ→Bメロ→サビの構成の楽曲が多い。それが定番で親しまれている。基本的にはメロディアスでサビになると盛り上がりが爆発する曲が人気である。
 
『bad guy』はそんな「日本的なポップス」とは全く違う方向性と構成の楽曲である。AメロもBメロもサビもはっきりしていないし、囁くように歌っているので歌よりもバックトラックの方が目立つ。
 
そもそも海外のトレンドとなる音楽が、日本のトレンドとズレているので『bad guy』が日本人が好む音楽とズレていることも当然かもしれない。
 
しかしBillie Eilishほどの世界的に社会現象と言えるヒットになれば、「話題になっているから」と日本人も聴き始める。それもあってか海外のトレンドを取り入れようと、日本の音楽家も日本の音楽シーンで挑戦しようとしているのだろうか。海外のトレンドを日本人にもわかりやすく伝えたいという、作曲者や編曲者の想いもあるのかもしれない。
 
My fans
 
 日向坂46『My fans』も『bad guy』からインスピレーションを得て制作されたのだろうか。
 
前半の少し怪しげなイントロやサビ前のフレーズや、後半にリズムやテンポが変わる部分は特に『bad guy』のパロディに思ってしまう。アザトパロディ。
 
しかしAメロ→Bメロ→サビと続く構成で、メロディアスでサビに向かって盛り上がっていくような「J-POPの王道」的な展開になっている。
 
おそらくメジャーシーンのド真ん中でJ-POPを作ろうする作曲家ほど、J-POPの王道や定番を気にかけているのだ。それと同時に海外のトレンドも取り入れて新しい音楽を作りたいという野望もあるのだろう。
 
だから力技で海外のヒット曲をJ-POPに変化させる曲が多いのかもしれない。
 
カバーでも「J-POP的な要素」を加えることがあると感じる。Novelbrightが『bad guy』のオフィシャルカバーをしているが、そこからもJ-POP的な要素を感じる。
 

 
原曲よりも音が重ねられて華やかに彩られている。ボーカルも歌い上げるような歌唱。
 
原曲ではイントロのみの部分にも〈I’m the bad guy〉というフレーズを加えたり、叫ぶようなフェイクを加えることで、Aメロ→Bメロ→サビのような構成に感じる曲へと力技で変更している。
 
またイントロ部分を口笛で表現しているので、声が聴こえない部分がほとんどない曲構成だ。これは「歌声」を求める人が多いJ-POPリスナーへの配慮かもしれない。『bad guy』を見事にJ-POPに変化させている。
 
 

 

 
『bad guy』に限らず海外のヒット曲や名曲をオマージュすることは珍しくない。
 
例えば奥田民生や財津和夫はザ・ビートルズのオマージュを何曲も作っていたし、Mr.Childrenも『名もなき歌』で『ticket to ride』のリズムパターンを引用している。
 
↑THE HIGH-LOWS↓『相談天国』はディープ・パープルの『Burn(紫の炎)』と『ハイウェイ・スター』のオマージュだと知っている人ならば聴けばすぐに気づくし、〈相談しよう そうしよう〉という歌詞とメロディは童謡の『はないちもんめ』の引用だ。
 
ORANGE RANGE『ロコローション』なんて、タイトルも歌詞もリトル・エヴァ『ロコ・モーション』のパロディであることが理解できるように配慮されている。
 
これらも賛否が分かれるかもしれない。パクりと判断する人もいるだろうし、酷いパロディと思う人もいるだろう。
 
個人的にはそこにオリジナリティとクオリティの高さが両立していれば良いのではと思う。
 
奥田民生も財津和夫も↑THE HIGH-LOWS↓もORANGE RANGEも、彼らにしかない個性を持っていると思うし、原曲へのリスペクトを持って新しい解釈でオリジナルの音楽を作っていると感じる。「オマージュ」も音楽を面白くする文化の一つではないだろうか。
 
最近もオマージュをしているアーティストはいる。
 
Vaundyが『life hack』でClairo『Softly』のフレーズを引用しているし、eill『Night D』の音色や編曲はThe Weeknd『Blinding LIghts』を参考にしているようだ。
 
Night D
Blinding Lights
 
個人的には両曲とも好きである。彼らの個性も感じるし、オマージュのセンスも悪くない。
 
もしかしたらVaundyやeillをきっかけにオマージュ元の楽曲にも触れて、彼らのファンが聴く音楽の幅が拡がるきっかけになるかもしれない。
 
自分は学生時代に触れた音楽がオマージュや引用をしていると知って、そこから聴く音楽の幅が拡がり、好きな音楽がどんどん増えていった。そうやって世代やジャンルや国を超えて音楽のバトンが繋がっていくのだと思う。
 
しかしガッツリとオマージュするならば、オマージュ元の作曲者をクレジットに入れることが、今の時代は大切だと感じる。10年以上前ならば音で敬意を表せば良かったかもしれないが、今は形として敬意を表すことも必要だ。
 
そしてやるならば「力技で強引に」ではなく「違和感なく自然に」やって欲しいとは思う。
 
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