ExWHYZ、1stアルバム『xYZ』が示す“生まれ変わり続ける”姿勢 EMPiREからの変化と進化が刻まれた決意の1枚 – リアルサウンド

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 2022年6月2日に開催されたライブをもって解散した6人組グループ EMPiRE。突然の解散発表にファンがざわつくなか行われたラストライブ、そのステージ上で所属事務所WACKの代表・渡辺淳之介によって発表されたのが、最終メンバー6人による新グループの結成と、ツアー『元EMPiREなりのラストツアー』の開催だった。そうして始動したのがyu-ki、mayu、midoriko、maho、mikina、nowによる新たなグループ「ExWHYZ」(イクスワイズ)である(midorikoは現在、持病療養のため活動休止中)。所属するレコード会社をそれまでの<avex trax>から<UNIVERSAL MUSIC / EMI Records>に移し、同ツアーのファイナル当日に第1弾シングル「Wanna Dance」を配信リリース。本楽曲は大沢伸一(MONDO GROSSO)がプロデュースしていることでも話題となった。
 始動から約5カ月、そのExWHYZが1stアルバムを完成させた。タイトルは『xYZ』。前述の「Wanna Dance」をはじめ、全11曲でEMPiREからExWHYZへの進化と変化をはっきりと伝える1枚である。何がEMPiREから引き継がれ、どこが生まれ変わったのか。そして生まれ変わることで彼女たちはどこを目指すのか。この『xYZ』はそれをキャッチコピーやビジュアルではなく、音楽そのものでプレゼンテーションする。もとよりEMPiREはとても音楽的なグループだったが、その音楽世界はここからさらに豊かでディープなものになっていくーーこのアルバムはそんな予感を確かに感じさせてくれる。
 そもそも「Wanna Dance」の時点で、ExWHYZが進むべき道筋は明快に示されていた。アッパーな曲調はEMPiRE時代とのつながりを感じさせるが、どちらかといえばサイバーで未来的な世界観が強く打ち出されたEMPiREとは違い、ビートにもベースにもウワモノのシンセにもどこかオーガニックなアナログ感が宿るトラックメイキング。それこそまさにプロデューサー 大沢伸一のスタイルだが、この曲調にこのサウンド感を掛け合わせた楽曲を一発目に持ってくることで、EMPiREからExWHYZへのトランスフォーメーションをはっきりと表現しようとしているのだろうと感じた。
 そうした姿勢は、歌詞にも表れている。EMPiREから引き続き本作でもメンバーが作詞に参加している曲が複数あるが、「Wanna Dance」には大沢の名前と並んでExWHYZがグループ名でクレジットされている。メンバー全員が作詞に参加しているのは、EMPiREの代表曲のひとつ「I have a chance!!」以来だ。〈生まれ変わってもこの世界で/きっと僕達は歌えるのさ〉と歌うこの曲には明らかに新たなスタートへの決意を刻んだものである。EMPiREは「生まれ変わって」ExWHYZになるという物語、それ自体が新グループスタートにあたっての大きなテーマだったのである。
 そしてそのテーマはこのアルバムにおいて、よりくっきりとした輪郭をもって体現されている。アルバムのどこを切っても、とんでもなく多面的でアーティスティック、かつ肉体的な音楽体験が襲ってくる。歯ごたえと飲みごたえがありまくりのアルバムなのだ。EMPiREのときは他のWACKアーティスト同様に渡辺淳之介と松隈ケンタが楽曲制作の中心にいたが、今作において彼らの名前がクレジットされた楽曲はひとつもない。代わりに参加しているのが、大沢はじめ各ジャンルの名だたるクリエイター陣である。たとえばアルバムの導入となる「xYZ」から〈今 始めるのさ〉という決意表明の2曲目「D.Y.D」への流れを生み出しているのは、yahyelの篠田ミルと山田健人。「D.Y.D」はかなりドープなテクノになっていて、リスナーを一気に覚醒させる重要な役割を担っている。
 その「D.Y.D」に続いて聞こえてくるのが、ロサンゼルスのシンガー/プロデューサー デニー・ホワイトが提供したEDMチューン「STAY WITH Me」。さらに80KIDZとMaika Loubtéが参加したハードなエレクトロ「Obsession」へとアルバムは続く。ここに並べた名前を見ても、そして実際に楽曲を聴いても、きっと誰もが思うはずだ。「攻めすぎでは?」と。そうなのだ。ざっくりダンスミュージックという意味では繋がっているが、たった4曲でまるでクラブでの一夜のように起承転結が描かれてしまっている。しかも参加しているのはその道の第一人者といえる面々ばかり。ExWHYZの6人はやすやすと乗りこなしてしまっているが、超ハードコアで濃厚なダンスアルバムになっているのである。
 しかし、そこからアルバムは色合いをより多彩にしていく。ここまでの4曲を聴いて「なるほど、EMPiREのダンスミュージック路線をさらにコアに突き詰めるのがExWHYZなのね」などと早合点してはいけない。なぜなら5曲目に来るのは、Michael Kaneko提供の洒脱なシティポップ「4:00 a.m」だからである。mikinaとmahoの書いた切ない恋愛模様を、力の抜けた6人の声がスムースになぞっていく。ダンスビートで押せ押せだったところから急にこのプライベートでアンニュイなニュアンスが出てくると、なんだかドキッとしてしまう。

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